ドラフトを前に永井智浩編成育成本部長に独占インタビュー
2025年のプロ野球ドラフト会議が、10月23日に都内で行われる。2年連続のリーグ優勝を達成したホークスはどのような未来図を描いているのか――。「鷹フル」は、永井智浩編成育成本部長への独占インタビューを実施。常勝軍団ならではのドラフト戦略に迫った。
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今季もパ・リーグを制覇したホークス。シーズン序盤から故障者が相次ぐ中、若手や中堅選手が台頭してチームを支えた一年となった。永井本部長は「ここ何年間かで、このようなスタートになったことはなかったので、不安な部分もありました。故障者が出る中で、若い選手にチャンスがいって、結果、最後1位でゴールできたっていうことは良かったと思います」と頷いた。
改めて充実の選手層を誇示した2025年シーズン。今年のドラフト市場について、永井本部長は「高校生が少なくなるんじゃないかなって思います。蓋を開けてみないと他球団のことはわからないですけど、そういう市場なような気がしています」と語る。全体的に指名候補は多くない中で、大学生に候補が多いと見ている。
今年は投手では健大高崎高の石垣元気投手や青学大の中西聖輝投手、亜大の齊藤汰直投手、山城京平投手、東北福祉大の堀越啓太投手、櫻井頼之介投手、鷺宮製作所の竹丸和幸投手らが注目を集める。野手でも創価大の立石正広内野手、明大の小島大河内野手、青学大の小田康一郎内野手らが上位候補に挙がる。
そんな市場の中で、ホークスはどのような方針でドラフトに臨むのか。永井本部長の答えは明確だ。そこには、2年連続リーグ王者だからこそ貫ける、他球団とは一線を画す独自の“スカウティング哲学”が存在した。
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続きの内容は
ホークスがドラフトで重視しない「意外な点」
永井本部長が語る、真の「補強ポイント」
若手が育つ、ホークス独自の「好循環」とは
「ドラフト(で獲得した選手)から来年の戦い(の戦力になる)っていうのは、本当にごく稀な感じかなと思っています。大学生だから即戦力っていうのは、そんなに強く思っていません。今の戦力を見て、急に1軍に入れてバリバリの即戦力を連れてこられるかというと、なかなか難しいところがあると思っています」
ホークスのドラフト戦略において「即戦力」はそれほど重視されていない。積極的な補強で構築された分厚い選手層は、主力の離脱があってもリーグを勝ち抜けるだけの力を持つ。プロ1年目から主力級の活躍を求めてはおらず、フロントとしてはそこを重要視してはいない。
「ゆくゆくはチームの中心になってくれそうな選手を」
「大学生でもホークスに来て、プロの水に馴染む時間みたいなものを作りながら、(入団後)1年、2年して(1軍に)上がっていってもらうみたいな感じで考えています。素材がいい、ゆくゆくはチームの中心になってくれそうな選手を指名していくイメージです」
狙いを定めるのは将来、チームの中心を担えるだけのスケールとポテンシャルを感じさせる素材。来季ではなく、3年後、5年後を見据えた指名こそが戦略の幹となる。「来年すぐに戦力として期待する選手を取ってくるのか、2年後、3年後の戦力として取ってくるのかの違い。2年前、3年前のドラフトの選手がやってくれるというのがうまく繋がっていけばいい」と同本部長は語る。
今シーズン活躍した野村勇内野手(NTT西日本)や正木智也外野手(慶大)は4年前の2021年、先発として6勝、防御率1.92をマークした大津亮介投手(日本製鉄鹿島)は3年前の2022年ドラフトで指名された。彼らはルーキーイヤーから1軍の戦力となったが、編成サイドとしては、大学・社会人出身者であっても数年単位のスパンで台頭を見込んでいる。
では、具体的な“補強ポイント”はどこになるのか。「やっぱりピッチャーですかね」と永井本部長は明かす。「今の投手陣が不安ということではなく、143試合を戦うのにピッチャーの枚数は必要だと思います。一番故障の多いポジションでもありますし、やっぱそこは持っておきたいなと思います」。
今季の優勝も、投手陣の層の厚さが鍵だった。チーム防御率2.39はリーグトップを誇り、4人の2桁勝利投手を擁するのは12球団でホークスのみである。「野手の中心選手が怪我で抜ける中、若手も奮闘したが、投手陣の踏ん張りがあったからこそ勝ち切れたシーズンだった」。リリーフ陣でもシーズン途中から杉山一樹投手が守護神に定着するなど、確かな上積みをみせた。
「だからこそドラフトで取った選手がすぐに出てこられないんですよ。ちゃんと戦力がいるので。(1軍を)経験をさせたりして、うまくモチベーションを持たせられるよう、色んなことを現場と一体になってやれているなっていうのはあるので。そういうところではいい循環でいけているんじゃないかなと思っています」
今季も高卒2年目の前田悠伍投手が初勝利をあげ、藤田悠太郎捕手がシーズン終盤に1軍を経験した。ホークスがドラフトで考えるのは数年先の未来。こうした戦略を描けるのも、充実した選手層を誇っているからこそだ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)