3回2死一塁…ファーストゴロの直後に審判と激突
予期せぬアクシデントに球場は静まり返った。18日に行われた日本ハムとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージの第4戦(みずほPayPayドーム)。一塁塁審と激突し、倒れ込んだ中村晃外野手の元に、表情を曇らせた選手やコーチらが集まった。「頼む、無事でいてくれ」――。目の前で一連の出来事を見ていた本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチは率直な思いを明かした。
3回2死一塁の場面だった。ファースト方向へのゴロを放った中村は、打球処理にもたついたマルティネスやカバーに来ていた北山らが集まった中で一塁を駆け抜けた。その直後に塁審とぶつかり、転倒。自ら立ち上がることができず、担架に乗せられたままベンチ裏に下がった。
治療の末に途中交代となり、病院に搬送。その後ドームに戻ってきた中村は「頭部の打撲」と診断されたことを明かし、「最初は何が起こったのかわからなかったです」と振り返った。激突から試合再開まで、およそ7分間。本多コーチが明かしたのはチームに走った“動揺”と、無事を願う思いだった。
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続きの内容は
本多コーチが明かす、中村晃への“総意”とは
2連敗を受け、首脳陣が語った次戦への覚悟
中村晃が激突後、取材で語った自身の状態
「無事でいてくれ」と願った理由…口にした“総意”
「交代となった時は、もう割り切るしかなかったですけどね。代わる前の雰囲気は『どうかな』っていう感じだった。それはなぜかというと、晃だから。ずっとホークス(の中心)を担ってきた選手だから。後輩たちも僕たち(首脳陣)も『頼む、無事でいてくれ』って。それが真っ先に思ったことです」
入団から18年、ホークスを引っ張ってきた中村。残した成績以上に、今季は苦しい春先からチームを支えてきた。「ここにきて綺麗な言葉では言えないですけど。勝つために晃が必要ですから」。本多コーチの言葉は、その存在感の大きさを表していた。
グラウンドに倒れながらも、中村は本多コーチと言葉を交わしたという。「『大丈夫だと思います』みたいな感じで。チームとしては痛いですけど、こういうことが起きるのも野球です。いるメンバーでやるしかないじゃないですか。晃が代わった時点で、(選択肢としては)山川が最善。調子がいい、悪いはあるかもしれないけど、それも含めてあと2試合やるしかない」と繰り返した。
目の前の1球に集中する…「気持ちを発揮できるか」
現役時代に何度も短期決戦を経験し、日本一に貢献してきた本多コーチ。18日の試合は痛い黒星を喫したが、あと1勝すれば日本シリーズ進出が決まるという状況は変わらない。2連敗という結果を受け止めつつ、チームに必要なことについて「絶対に諦めないことです」と言い切った。ここまでくれば、目の前の1球に集中するだけだ。
「諦めている人はいないですけど、行動に出すということです。『あと2試合それを出せ』と。一喜一憂せずにピッチャーと向き合って、一瞬一瞬で気持ちを発揮できるか。できなかったら負けるんですから。最上級で言えば、お客さんを喜ばせるために戦うしかない。プレーをする中でも、応援してくれるファンの方がいて、その先にチームの勝利があるので」
ゲームセットから約1時間半後の午後6時56分。中村は報道陣の前に姿を現し、取材に応じた。「ちょっとフラフラしているなっていうのはあります。箇所が箇所なので。様子見かなという感じにはなると思います」と話すにとどめた。明日のことはまだ不透明だが、背番号7の存在が不可欠であることには変わりない。チーム全員で、“あと1勝”を掴み取る。
(竹村岳 / Gaku Takemura)