項垂れる杉山一樹に上沢直之が迷わず取った行動「僕らの勝利は…」 示した“9/11”の感謝

杉山一樹(手前)に声をかける上沢直之【写真:小池義弘】
杉山一樹(手前)に声をかける上沢直之【写真:小池義弘】

9回に2失点し敗戦投手になった杉山に上沢が取った行動

 決勝打を許し、肩を落としてマウンドを降りた守護神を独りにしなかった。「いつもありがとうって気持ちも込めてですね」。先発の上沢直之投手が杉山一樹投手に見せた行動には、感謝の思いが詰まっていた。

 20日にみずほPayPayドームで行われたオリックス戦。上沢は2点リードの4回に逆転3ランを浴びたものの、7回3失点と試合を作った。しかし、同点の9回に杉山が3四死球でピンチを招き、廣岡に決勝の適時打を浴びるなど2失点を喫した。

 直後の攻撃で近藤健介外野手がこの日2本目となる10号ソロを放つも、反撃は及ばず連勝は5で止まった。「アウトを取るのを急いでしまった」とうなだれ、ベンチに戻ってきた杉山に寄り添ったのは上沢だった。

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上沢が杉山にかけた言葉、そこに込めた真意とは
チームが杉山を「責めない」と断言する理由
上沢と杉山、固い絆で結ばれた2人の関係性

 最後は太田を三振に取り、笑顔なくマウンドを降りた杉山のもとへ、迷いなく駆け寄った。声をかけると、背中をポンと1回叩いた。その後も、上沢はベンチ前でチームの逆転を願うように声を出し続けた。試合後にその行動の思いを明かした。

「今年、勝っているのは藤井(皓哉)、マツ(松本裕樹)、スギ(杉山)の3人のおかげだと思うし、スギには何度も何度もチームを救ってもらっているので。彼は思うところがあるかもしれないですけど、次に向けて頑張ってほしいなという思いでした」

 ロベルト・オスナ投手のコンディション不良でシーズン途中から守護神になった杉山。ここまでリーグトップとなる62試合に登板し、防御率1.92。セーブ数も同トップタイの28をマークしているが「チームの勝ちが最優先」と、勝利の2文字だけを考えて腕を振っていた。そんな4学年下の右腕を上沢も心から尊敬していた。

上沢の11勝のうち、9試合で杉山が登板

「本当に彼は賢いというか、僕も色々とアドバイスをもらったりするので。そんなふうに見えないですけど、賢いし、継続力のある選手。スギでやられるなら仕方ないってチーム全体で思っていると思う」

 今季、上沢が勝利を挙げた11試合のうち、杉山は実に9試合に登板。5セーブを挙げ、登板した全ての試合でリードを守り抜いた。先発投手は完投しない限り、救援陣がリードを守り抜くことで白星を手にすることができる。「僕らの勝利は基本的にスギが投げることで、ほぼ決まると思うので。あそこでやられたところで誰も文句も何もない」と労った。

 杉山自身は「(ピンチを)自分で招いてしまったので。自分で片付けるくらいの気持ちで抑えに行ったんですけど……」と肩を落としながら振り返った。誰も杉山を責める人はいない。再び歓喜の瞬間を共にできる日を心待ちにしている。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)