首脳陣が評価した判断力
快勝ムードが漂う中でも高い集中力を保った。15日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)、4点リードで迎えた8回、先頭で安打を放った川瀬晃内野手。続く緒方理貢外野手のバントが内野安打となった間に、相手守備のわずかな遅れを見逃さずに三塁を陥れた。途中出場ながら、存在感を強く示すプレーだった。
好走塁の後には佐藤直樹外野手が犠飛を放ち、ダメ押しの1点を奪った。7回に山川穂高内野手の満塁弾で試合が決まったかのように思える状況でも、先の塁への貪欲な姿勢を見せた。塁に出た瞬間から川瀬の頭の中には何が描かれていたのか――。そこには、高度な状況判断力と、内に秘める熱い思いがあった。
途中出場で見せた執念
「途中から出ている身なので。結果を出すしかないですし、ああいう姿を見せるしかないので。そういう気持ちですね」
快勝ムードの中でも、川瀬の集中力は研ぎ澄まされていた。三塁を陥れた判断について「二塁ベースを回る前に、誰が(打球を)取ってるかを確認するので」と冷静に振り返る。結果的には投手が打球を処理したが、川瀬は二塁に到達する手前で、バント処理で前に出ていた三塁手がベースカバーに戻れないと判断。スピードを緩めることなく三塁に頭から滑り込んだ。
さらに驚くべきなのは、この一連のプレーが出塁した時点で想定されていたということだ。「バントが決まる前から三塁を狙う意識はもちろんありました」。あらゆる可能性を頭に入れていたからこそ、迷いなく三塁へ到達できた。1つのプレーに懸ける執念が、相手のわずかな隙を見逃さなかった。
「信頼度が高い」と評価される理由
このプレーを、本多雄一内野守備走塁コーチは技術的な視点から「見るタイミングが良かったですね」と評価する。「二塁を回る前にサードがカバーに入っていないことが見えていた。そのタイミングが少しでも遅れたら行けないですからね」。一瞬の判断ミスがアウトにつながる状況で、完璧なタイミングで相手守備の穴を突いた。「あれは走塁意識ですよね」と本多コーチは続けた。
その意識を、奈良原浩ヘッドコーチは“信頼”と表現した。「いい走塁だったね。こっちの期待通りにやってくれるから、やっぱり信頼度が高い選手だよね」。首脳陣が求める以上のプレーを、当たり前のように体現する。その積み重ねが、揺るぎない評価につながる。背番号0の判断はまさに、チームが目指す野球と姿勢を象徴するものだった。
これでチームは本拠地での連勝を「13」に伸ばした。点差が開いた終盤に見せた好走塁は、チームの強さと勢いを感じさせるものだった。川瀬を讃えてはいたものの、首脳陣からはどこか“当たり前”の空気も感じられた。それだけ27歳に求めるプレーが、高いレベルにあることを物語っている。「スタメンで出ても、後から出ても1点を取りに行く気持ちは変わらないです」。涼しげな笑顔で語る川瀬の表情も、そのことを理解しているようだった。
(飯田航平 / Kohei Iida)