上沢直之が感謝した山川穂高の“声かけ” 明かした会話の中身…伝えていた「お願い」

上沢直之に声をかける山川穂高(右)【写真:小池義弘】
上沢直之に声をかける山川穂高(右)【写真:小池義弘】

ピンチで山川が2度の声かけ

 苦しい場面でのさりげない気遣いが、右腕の心を落ち着かせた。13日にベルーナドームで行われた西武戦。先発した上沢直之投手は6回3失点(自責1)の内容で今季8勝目を挙げた。粘り強い投球を見せていた右腕に対し、ピンチの場面で2度にわたって声をかけに行ったのは山川穂高内野手だった。

 1度目は5点差の5回1死二塁で山村に四球を与えた場面。2度目は際どいコースへの投球がボールと判定され、四球で無死一、二塁のピンチを招いた6回のシーンだった。山川が再びマウンドに歩み寄り、その後に倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)もベンチから出てきた。

 初回に5点を奪い、結果的に逃げ切った試合展開。小久保裕紀監督は「上沢が良く頑張りましたし、変な流れでしたよね」「自責ゼロという査定をします」と右腕の投球を評価した。上沢と山川の2人が明かした会話の中身。右腕から伝えた“お願い”とは――。

「山川さんが『もう気にせんと、頑張ろう』みたいな感じで言ってくれたので。ゲッツーをお願いしますみたいな(笑)。(ゴロを)打たせるのでって会話はしましたね」

 4点リードの6回無死一塁。カウント3ボールからの4球目は真ん中高めへとわずかに外れた。際どい判定に苦笑いを浮かべた上沢に対し、山川が真っ先にマウンドに歩み寄り、励ましの言葉を伝えた。

 声をかけた山川にとっては“当たり前”のことだった。「外野が(マウンドに)行くわけにいかないので。捕手も行く回数が決まっているので」。内野の要である今宮健太内野手は戦線離脱中。「ホークスは経験値が高い人もたくさんいますし。牧原(大成)とかも積極的に声をかけに行くし、今宮がいたら今宮(が声をかけたり)とかね」。そんな中で、自らも少しでも空気を変えたい――。そんな行動だった。

「上沢みたいなすごい投手に行く必要もないんですけど…」

「四球の時のバッターって、防具とかを外しながら一塁まで歩いて行くじゃないですか。あのタイミングで時間があるので。“ちょっとひと声”っていうだけです」。タイミングも見計らった上での声掛け。「上沢みたいなすごいピッチャーというか、経験値がある投手は行く必要もそんなにないですけど、一応っていうところで」と振り返った。

 厳しい判定に苦笑いを浮かべていた上沢も、山川の会話で少し落ち着きを取り戻した。その後は守備の乱れもあって2点差まで詰め寄られたものの、最後は有言実行でネビンを遊ゴロ併殺、村田を一邪飛に仕留めた。

「声かけに意味があるかないかはわからないですけどね。でも、別に減るものでもないし」と山川。一方で、「ありがたいですね。気分転換にもなるので。あまりに(気持ちが)入りすぎていて良くない時もあるし、一呼吸おいてもらった方が気持ち的にはいいと思う」と上沢は感謝する。さりげない声掛けに見える関係性--。それもまた野球の魅力だ。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)