首脳陣の思惑が的中、モイネロも絶賛「いい手段」 首位攻防戦で施した“2つの策”

完封勝利で抱き合うリバン・モイネロと海野隆司【写真:荒川祐史】
完封勝利で抱き合うリバン・モイネロと海野隆司【写真:荒川祐史】

小久保監督は立ち上がりを見て“確信”

 この3連戦が重要な首位攻防戦になる。「だいぶ前」から、首脳陣は“2つの手”を打っていた。10日に行われた日本ハム戦(みずほPayPayドーム)に1-0で勝利し、貯金を今季最多の「26」とした。2位とのゲーム差を「3」に広げられた理由――。勝負どころを見極めながら、小久保裕紀監督は強く手綱を締めていた。

 先発したのは、リバン・モイネロ投手。初回から相手打線を寄せ付けない圧倒的なピッチングで、8回には3者連続三振。結果的に13個もの三振を奪い、今季2度目の完封勝利を挙げた。「きのう(9日)は有原(航平)がよく投げてくれましたし、チームの勢いもあったと思う。それを自分も続けたいと思っていたので、勝ててすごく嬉しいです」。125球を投げ切り、充実の汗を拭った。

 7月29日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で9勝目を挙げると、30日に今季初の登録抹消となった。中11日で迎えたこの日。小久保監督も「立ち上がりを見た時に、疲れが抜けているような印象だった。それが最後まで続きました」と、しっかり体力を回復させた左腕に目を細めた。それもそのはず。モイネロ自身も「いい手段」と認めたのは、首脳陣の采配が的中したからだ。

今季2度目の完封…モイネロも「結果がついてきた」

「いつ投げるというのは監督が決めること。いいピッチャーをいい順位にいるチームに持っていくのは、すごくいい手段だと思いますし、しっかり結果がついてきて良かったです」

 そう口にしたモイネロの防御率1.19は12球団トップの数字。有原、大関友久投手に加えて、難攻不落の左腕を意図して日本ハム戦に持ってきた。小久保監督は「何度も言いますけど、3本柱でこのカードにきているので。明日(11日)も勝つ気でいきたいと思います」とキッパリ。首位争いをするライバルを、ここで叩く――。首脳陣の意思表示に、最高の結果で応えてみせた。

 モイネロは今季18試合に先発。日本ハムとは6度対戦して4勝0敗と、どこまでも頼もしい。開幕からローテーションを守り続けていた中で、指揮官も「オールスターが終わったら1回(登板を)飛ばそうっていう話はだいぶ前にしていたんです。ここ(この3連戦)にハマった感じになりましたね」。首位攻防戦と位置付けられたこのカード。ヒーローとなった背番号35も「緊張感がある試合でした。どの試合、どの対戦相手でも集中したプレーができている」と、ナインの思いを代表するように語った。

首位攻防戦の雰囲気を「大いに意識して戦っている」

 ローテーションに加え、首脳陣はブルペンにも“策”をしのばせていた。前回のエスコンフィールド、そして今回の日本ハム3連戦において、一部の中継ぎ投手に「3連投の解禁」を明言していた。第2戦となったこの日、モイネロが最後まで投げ切ったことで「3連投」は現実とはならなかったが、それだけ勝負どころだと認識していた何よりの証だ。

 残り試合に選手の負担……。さまざまな要素を踏まえながら、対戦相手を見て作戦を変える。事前に準備してきた首脳陣の思惑が、しっかりと的中した。「(首位攻防戦という雰囲気は)そりゃありますよ。ベンチでの声にしても、大いに意識して戦っている3連戦なので」と小久保監督。独走態勢に入りつつあるかと思えば「まだまだ先はある」と足元を見つめた。手綱を締めるところは絶対に間違えない。隙を見せることなく、このまま一気にゴールテープを切るつもりだ。

 102試合を終えて、ここまでの戦いを展開できているのはモイネロの存在があるからこそ。「(3回に川瀬晃が)バントをしっかりと決めたり、チームとしても集中力があった。自分も9回を投げられたのは嬉しいですし、今後も続けていけるように頑張りたいです。1つずつ勝っていくことが大事なので」。今後もマウンドに君臨し、必ずホークスを連覇へと導く。

(竹村岳 / Gaku Takemura)