むなかったん・あらたが鷹フル“特任記者”に
鷹フルをご愛読の皆さま、はじめまして! お笑いコンビ「むなかったん」として活動している、あらたと申します。この度は縁がありまして、鷹フルの“特任記者”として原稿を書かせていただくことになりました。吉本興業所属で芸歴6年目、宗像市出身の29歳。野球歴は小学2年生から大学4年生までの15年間で、福岡教育大3年時の2017年春季リーグでは外野手部門でベストナインに選出されました。
鷹フルで初めてとなる記事のテーマは「球団アナリストの仕事」についてです。私たちが普段目にしている野球の試合、いわゆる“表舞台”には登場しないものの、卓越したデータ収集力や分析力でチームを支える「縁の下の力持ち」。近藤健介外野手や今宮健太内野手の知られざる素顔も聞くことができました。ぜひご覧ください!
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4月を終えてリーグ単独最下位とまさかのスタートを切ったものの、5月以降は徐々に本来の力を見せ始めたホークス。今回は“大逆転優勝”のカギを握るであろう、アナリストの方に話を聞きました!
ところで、アナリストは普段何をしているのかご存じでしょうか。1つ目の仕事は他球団の投手や打者についてはもちろん、走塁の傾向や首脳陣の采配にいたるまで、膨大かつ緻密なデータを収集、整理することです。2つ目はホークスの選手それぞれの要求に応えるべく、データ解析を行うこと。3つ目は個別ミーティングで分かりやすく説明し、選手が納得いくまで数字やデータを出し続けることです。アナリストの存在が常勝軍団を支えているといっても過言ではなく、今季の交流戦優勝にもつながりました。
もちろん、これだけでは終わりません。注目したのは、ホークスのオフェンスにおけるデータ活用について。自分なりの視点で深掘りしてみました。
膨大すぎる分析対象…「捕手の性格」もデータ化
今回お話を伺ったのが、1軍アナリストとして活躍している松葉真平さんです。アナリストはホークスの試合はもちろん、他球団同士の試合もくまなく目を通し、「投手の特徴」や「バッテリーの配球傾向」、そして「捕手の性格」までも分析、整理するのが主な仕事。例えば「投手の特徴」であれば、アウトカウントや走者の有無といった状況ごとの「初球の球種、コース」や、ボールカウント別の「ストライク率」といった細かなデータを分析しています。
さらに「捕手の性格」に関しては、「同じ球種を何球続けて投げさせるか」「ピンチでの直球割合」など、マスクをかぶる選手の精神的な要素までデータに反映させて分析しているそう。
これらの分析を元に、選手それぞれとの個別ミーティングに入るのですが、ここからがアナリストの腕の見せ所です。100人いれば100人が異なるデータを求めるのがプロ野球の世界。そのため、選手ごとの経験値や打撃スタイル、また打席の中で重きを置いているポイントに合わせたミーティングが必要となります。
話を聞いていくと、アナリストが“うれしい悲鳴”をあげる選手がいるとのこと。それは、ホークスが誇る天才打者、近藤健介外野手です。日本を代表するバットマンが必要とするデータは、我々の想像を遥かに超える緻密さと膨大さを極めるのだとか。
天才打者が求める膨大なデータ…アナリストの“うれしい悲鳴”
例えば「相手投手の球種別のストライクゾーン率」。これは、それぞれの球種がどれだけストライクゾーンを通っているか、どのカウントでどの高さに投げ込んでいるかなど、気の遠くなるような数字の羅列が続きます。また、三振を狙ったフォークがどの高さから落ちて、何%がストライクになっているのか--。この確率を炙り出せれば、追い込まれてからフォークに手を出すかどうかの判断に直結するそうです。
このデータが各球団の相手投手全てに必要になります。近藤選手だけでなく、多くの選手のためにアナリストは寝る間を惜しんで作業する日々。それでも手塩にかけてまとめたデータのおかげで快音が生まれれば、その苦労も吹き飛ぶそうです。
さらにもう1人、細かなデータを必要とするのが今宮健太内野手だといいます。プロ通算400犠打まで残り「3」に迫っているバント職人のこだわりは、やはり計り知れないものがありました。なんと、バントをする時にも相手投手の配球データを頭に入れて打席に入るそうです。
例えば無死一塁での初球の入りはストレートが多いのか、変化球が多いのか。さらにストライクから入るのか、ボールから入るのか。はたまた、複数回けん制が入るのか--。こういった状況別の細かいデータを常に準備をしているアナリストだ。
アナリストの意外な信念「しゃべりすぎない」
ただ意外にも、これだけの情報を持って選手と個別ミーティングに臨むアナリストが心がけていることは、「データをしゃべりすぎないようにすること」。なぜなら、選手自身も映像や対戦経験から自分なりに分析しているため、あくまでも選手から要求されたデータだけを伝えるようにしているといいます。
最後に松葉さんに「どういう仕事ですか?」と聞くと、「選手が打てる可能性を1%でも高くすること」という答えが返ってきました。続いた言葉は「やりがいは勝つこと」。時には眠る暇がない多忙な生活も、1本のヒット、1本のホームランで報われるそうです。
とてつもなく膨大で、緻密な分析を1年中行う最強アナリスト軍団の存在--。今年もこの“最強布陣”のもとでパ・リーグ連覇、そして日本一をぜひとも達成してもらいたいです!
【筆者プロフィール】
むなかったん あらた
1995年12月15日生まれ、宗像市出身。吉本興業所属の芸歴6年目、RKBのホークス応援団長を務め、2022年からRKBラジオでホークス戦全試合を解説。宗像市観光大使にも任命されており、2024年12月にコンビ名を「とらんじっと」から「むなかったん」に改名した。
(むなかったん・あらた)