リチャードが消せなかった”迷い” 首脳陣が降格決断した理由…「仕方ないよねって」

リチャード【写真:冨田成美】
リチャード【写真:冨田成美】

6戦12三振…2軍での再調整が決定した

 不振に苦しむ「未完の大砲」に決断を下した。小久保裕紀監督は4日、西武戦(みずほPayPayドーム)の終了後にリチャード内野手の2軍降格を明言した。自身初の開幕スタメンを手にしたが6試合で22打数2安打12三振。守備でも2日の日ハム戦(エスコンフィールド)で失策を犯すなど、ミスが続いていた。

 昨季まで5年連続で2軍の本塁打王。大砲候補として期待された25歳が、1軍で成績を残せない原因はどこにあるのか。「もう自分で乗り越えるしかない」。首脳陣が語ったリチャードに足りないモノと降格決断の背景とは――。

「結論から言えば数字が残っていない以上は仕方がないよねって話です」。奈良原浩ヘッドコーチは降格理由を説明した。この日、「8番・三塁」で出場したが、2回の第1打席は3球三振。5回の第2打席でも追い込まれてから外のスライダーにバットが空を切った。7回1死一、二塁のチャンスでは代打を送られ交代した。

 試合前の打撃練習では柵越えを連発。とてつもない打球を飛ばし、打球音のみでもリチャードが練習をしているのがわかる。一方で、試合になると高めの直球には振り遅れ、外角の変化球にもバットが出てしまう。村上隆行打撃コーチは「やってきたことの形はできあがっている。あとはゲームの中でどういった選択をするかだけだと思う」と評した。

 栗原陵矢内野手が戦線離脱し、巡ってきたレギュラーのチャンス。掴むには結果が必要だった。師匠でもある山川穂高内野手が以前「実績がある人は年間を通して首脳陣に見てもらえますけど、(リチャードは)我慢してもらえる実績もないですからね」と語っていた。すぐに結果を出さないといけない。そんなリチャードの焦りを村上コーチは感じ取っていた。

奈良原浩ヘッドコーチと話すリチャード(右)【写真:冨田成美】
奈良原浩ヘッドコーチと話すリチャード(右)【写真:冨田成美】

降格決定後…村上コーチが与えたテーマ

「仕留めきれないところで、打席の中で迷っていた。結果に囚われすぎてブレーキがかかってしまう。伸び伸びとできなかったっていうところ。いい準備をしてキャンプも臨んできたし、シーズンにも臨めている。かなり進歩はしているんですけど、最終的に結果を出すためのゲームの中での段階ですよね。そこはもう自分で乗り越えるしかない。その奮起を待っているしかないです」

 降格が決まった直後、村上コーチはリチャードと話し合った。1軍レベルの投手を打ち崩すために「ゼロコンマ何秒のキレ」を求めた。「テーマは彼にも与えたので。それをしっかりとやってきて次に来るための準備をしておけと」。もう一度2軍で自信をつけて戻ってきて欲しかった。

 今年でプロ8年目。25歳となり、悠長にしている時間はない。それでも「メンタル的にも鍛えれば必要な選手だと思うので」と村上コーチ。ポテンシャルは誰もが認めるところ。再び這い上がるしかない。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)