鷹フルリレーインタビューの3人目…ドラフト1位として感じている重圧を激白
いよいよ始まった2025年の春季キャンプ。リニューアルした「鷹フルリレーインタビュー」をお届けいたします。3人目は、前田悠伍投手です。今季が2年目となる19歳。アマチュア時代から活躍してきた中で、ドラフト1位だからこそ感じる重圧を語りました。自らが明かした“英才教育”の第2章――。ブレない意思を持って、開幕ローテーション入りを目指します。
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ルーキーイヤーだった2024年、1軍では1試合に登板して防御率18.00。苦い思い出にはなったものの、2軍戦では4勝1敗、防御率1.94と才能の片鱗を示した。今春のキャンプでは、開幕ローテーションを争う1人として位置付けられ、必死にアピールしようとしている。「周りも『いい球投げているな』って感じますけど、それは人のことなので。まずは自分のことを最優先にというか。自分がアピールすれば評価はしてもらえると思います」。周囲を見たくなってしまうが、進んでいく方針は絶対に見失わない。
昨シーズンは、前田悠のためだけに「特別強化プログラム」を設けられ、登板の日程や課題などを球団と首脳陣が細かく先導した。大阪桐蔭高時代には、全国制覇を3度経験。無限の可能性を秘めた左腕を、大きく成長させようと周囲もサポートしてきた。2年目になる2025年、プログラムの進捗を自ら明かす。
「1年目だけで、今は周りと一緒(の扱い)って感じです。シーズンに入って、ローテーションで回るってなっても、『ペースはこっちで決めるけどアピールとかそういう部分は決めない(特別扱いしない)から』と。まだ年が年だし、怪我も怖いから体力作りもしながら、ペースとかはこっちが決めていく、とは言われています」
8月に20歳になるものの、フィジカルはまだまだ発展途上。完全にプログラム“卒業”というわけではなさそうだが、大幅にステップアップしたのは確かだ。キャンプイン以降、首脳陣とのやり取りについては「技術面の話は全然していないです」という。1月は高知で、カブス・今永昇太投手と自主トレをして、ノウハウを身につけて帰ってきた。取り組んでいくべきことについては「それは自分で決めています」と、少しずつ方向性を託されるようにもなってきている。
今回のキャンプではS組が導入され、投手からは5人。宮崎にいるのは松本裕樹投手だけで、ロベルト・オスナ投手ら外国人の来日もまだこれからだ。自然とファンの注目も、A組に集中する。周囲からの期待を感じつつ、前田悠は「一時だけ、注目されても意味がない。去年プロに入って、今だけかもしれないですし。まだまだ現状に満足せずに、上がっていきたいです」と足元を見つめる。
ホークスが誇る有望株。カメラを向けられ、撮られている意識は「感じます」という。今永との練習では、常に脱力することをテーマに掲げてきた。注目と期待を背負いながら「逆に言えば撮られているからいい球を投げようとか。場の雰囲気で、力んじゃう空気が作られているので。その中だからこそ、いつも通り、1人で投げているみたいな感覚で投げられるようにしたいですね」。ドラフト1位にしかない重圧は、いつも自分の背筋を伸ばしてきた。
「変な行動は取れないと常に思っています。高校だったら日本一(が目標)だと言われていたんですけど、そういうことには慣れているところがあるので。注意はしていますし、野球をやっている時の目配りは、高校の時から言われていました。意識しながら、自分の課題を克服するために練習もやっていけたら。そう思うと、去年も濃い1年だったなと思います」
第1クール3日目、キャンプ2度目のブルペン入り。111球を投じ「自主トレから継続している脱力は、自分の鍵になってくる。今日の内容は、後半になるにつれて上半身に力が入ってしまって、腕で投げていました。力んでしまうのがわかったので。いつも初球と同じような力感で投げる練習はしていきたいです」と分析した。先輩たちを追い抜いて開幕の枠に入るために、全てを費やして2月を過ごす。
「周りは、1軍でバリバリ投げている人ばかり。経験値の差は違いますけど、技術面以外で負けていたら終わりだと思う。気後れしないように。そこに技術が乗って来れば完璧だと思うので、負けないようにしたいです」
熱い決意は決して、クールな表情には表れない。「根が負けず嫌いですからね。負けてもいいとは1ミリも思っていないです。競争にも勝っていきたいです」。英才教育の“第2章”。進化を止めない前田悠伍なら必ず、1軍でも戦っていける。
(竹村岳 / Gaku Takemura)