父から驚きの一言「顔が死んでたな」 大山凌が見抜かれた胸中…最大の理解者との絆

インタビューに応じた大山凌【写真:冨田成美】
インタビューに応じた大山凌【写真:冨田成美】

悩み相談の相手は父「1時間ぐらい話し込むこともある」

 今キャンプからリニューアルしてお届けする「鷹フルリレーインタビュー」。2番手として登場してくれたのは大山凌投手です。前編となる今回は、家族との絆を語ります。「顔が死んでたな」――。父が気づいていた、右腕の変化に迫ります。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 父親だからこそ気づけた変化があった。大山は年末年始を地元の栃木で過ごし、久しぶりに父との再会を果たした。「そんなに量は飲まないですけど、お酒を飲んだらそういう話になった」。親子で振り返ったのは、怒涛の1年目だった。

「毎日練習で、めちゃめちゃ厳しかった」という父の存在。中学時代は学校から帰宅すると、家に上がることもなく玄関に荷物を置いてすぐに2人で練習場に向かった。高校からは親元を離れての寮生活だったが、試合は欠かさず観戦に訪れてくれた。

 誰よりも大山のことを近くで見守ってきたからこそ、その変化は画面越しでも伝わっていた。「あそこから顔が死んでたな」。年末年始に大山が父と交わした会話と、親子の変化とは――。

「『思っていたよりは投げれていたね』って言われましたね。でも、日本ハムに逆転された試合(逆転負けを喫した9月4日)。『あそこから顔が死んでたな』って言われたんですよ。自分的には頑張って切り替えようと思ってたんですけど、そんな簡単なものじゃなかったですね」

父親との関係性を明かす大山凌【写真:冨田成美】
父親との関係性を明かす大山凌【写真:冨田成美】

 昨季はルーキーながら18試合に登板し、1勝1敗、防御率3.25の成績だった。しかしシーズン後半になると、徐々に思うような投球ができなくなってきた。「9月くらいから調子が落ちてきた」と1年目を振り返る大山だが、その変化を誰よりも最初に気づいていたのが父の栄幸さんだった。

「情報が僕より早い時があるんです。電話した時に言ってくるんですよ。『俺それ見てないんだけど』って思いながら。知らないところで、いつも見てくれているんですよね。調子が落ちてきたことにも気づいていました」

 テレビで試合を見るのはもちろん、情報には常にアンテナを張る父。「全部見ていますね。投げる試合も、記事も全部見ているはずです」。常々行っている“息子サーチ”。たまにする電話で、最新の情報を知ることも多々あったという。その会話の中で、悩みを打ち明けることもあった。

「定期的にってことじゃないですけど、何かあった時に野球の話もします。ちょっとした迷いみたいなものが出てきたら、電話しようかなって思うんです。だから1回の電話が長いんですよ。1時間ぐらい話し込むこともあります。ずっと見てくれているので」

 大学時代までの大山の投球をすべて知るのは父。だからこそ今でもアドバイスを求めることができる。「高校でお世話になった知り合いから、僕と親父でご飯に誘ってもらったんですけど、その時にお酒を飲みながら『昔はとんでもなかったですよ。スパルタだったんで』って親父をいじりました」。厳しかった父とは、今では友達のような関係。野球を肴に酒を酌み交わす時間は格別なものだろう。

「『去年以上の覚悟を持っていかないと、新しい人が入ってくるから潰されちゃうよなぁ』っていう話はしました」。A組でスタートした春季キャンプ。求められる役割と、やるべきことは理解している。去年は果たせなかった開幕1軍。それを勝ち取ることが、何よりも父を安心させる材料になる。

(飯田航平 / Kohei Iida)