ちょっぴり大人な姿で、宮崎に帰ってきた。岩井は2年目の春季キャンプをA組でスタートさせた。「1年目が終わって、色々と要領を掴めたというか。余裕を持てているかなと思います」。宮崎はあいにくの雨だったが、無事にキャンプ初日を終えたことに充実の表情を浮かべた。
ルーキーイヤーの昨季は15試合に登板し、1勝1敗、防御率3.46の成績。中継ぎ陣の故障が相次いだ後半戦はリリーフ陣を支える活躍を見せたが、すべてが順調だったわけではない。何度も悔し涙を流すなど、センシティブな一面を見せてきた。そんな右腕は力強く宣言する。「泣き虫卒業っす」。後輩も入団してきた中で、見せなければいけない姿がある。
「後輩からすごいなと思われるような人になりたいんで、日頃からピシッとしていたいです。去年のキャンプで先輩たちを見た時に、マジで全員すごいなと思ったんです。社会人としての立ち振る舞いであったり、資本の体を大事にする姿を見てすごいなと思って見ていました」
1年目の春季キャンプで見てきた先輩の姿や行いすべてが、右腕にとっては新鮮だった。そのどれもがかっこよく映った。これがプロ野球選手か――。今度は自分が手本になる番。“1年目だから”が通用しなくなるシーズンが始まった。
岩井が担う中継ぎのポジションは、今季も激しい争いが繰り広げられる。「本当に中継ぎのピッチャー陣はすごいので。7枠とか8枠くらいなんですけど、自分の中で数えていたんですよ。そしたら自分の枠がないです。自分自身を見つめたら、入る場所がないと思っているので。本当に激戦区です」。ネガティブな感情ではなく、冷静に自身の立ち位置を見つめ直した。
「僕は試合中にピンチになったりすると、自分の中でも『やばい、やばい』みたいな焦りっていうか、頭が真っ白になってしまう。そんな所をなくして、落ち着いて投球できるようになりたいです。そのためには日頃の練習を積み重ねて、自信を付けるしかないと思うので。練習を一番大事にして、突き詰めてやりたいです」
昨年9月4日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)は忘れられない試合になった。9回に抑えとして登板した松本裕樹投手が右肩のアクシデントにより降板。緊急登板となった大山凌投手がその後に3点を失って同点とされると、2死二塁で登板した岩井も流れを止めることができなかった。清宮に一発を浴びるなど、逆転負けを喫してしまった。「あの試合が一番悔しかったです」。今思い出すだけでも、胸の中に苦い思いが広がる。
「1年目だからしょうがないよ」。試合後には先輩たちからも声をかけられたが「ルーキーであることは言い訳にはできない」。そのことは岩井自身がだれよりも理解していた。
「今のままだったら絶対に無理なんで。本当に努力してやるしかないと思います」。キャンプ初日から投手陣は火花を散らした。A組にいる20人の投手ほとんどがブルペン入り。ベテランも若手も横一線で、必死のアピールを行っている。「悔し涙を、嬉し涙に変えます。悔しい思いを減らせるように」。自ら宣言した“泣き虫卒業”。心も体も一回り大きくなった姿で、開幕1軍を掴み取る。