育成時代は「人として扱われなかった」 牧原大成が明かす“リアル”…「一生戻りたくない」

インタビューに応じる牧原大成【写真:竹村岳】
インタビューに応じる牧原大成【写真:竹村岳】

育成選手の取り組みは「甘い」…牧原大の苦言に見えた“ルーツ”

 育成から這い上がった男ならではのプライドが詰まった一言だった。「育成のホークスって言われますけど、そうやってくくられるのは好きじゃないですね」。そう口にしたのは、今季15年目を迎える牧原大成内野手。口調は静かながらも、その表情は真剣そのものだった。

 熊本・城北高から2010年育成ドラフト5位で入団した牧原大。2年目の2012年シーズン途中に支配下選手登録を勝ち取ったが、そこに至るまでの道のりを「一生戻りたくないですね」と振り返る。育成同期の千賀滉大投手、甲斐拓也捕手とともに泥水をすするような覚悟で這い上がった日々が今の自分を作り上げた。そんな牧原大の“矜持”に迫った。

「本当にきつかった。(支配下の選手と)同じ人として扱われている感じはしなかったので。だから球団が育成(選手)を育てたみたいな感じというか……“育成のホークス”って言われるとすごく腹が立ちますね。育てられたんじゃなくて、自分で育ったんだって」

 牧原大自身、育成入団に迷いはなかった。「ユニホームを着られるだけで幸せでしょ、って。正直、育成選手っていうものが何かもわかっていなかったので」。チームに入ってみて、初めて現実を知った。芽生えたのは強烈なハングリー精神だった。

「1軍は別物でした。当時スタメンで出ていたメンバーに勝つのは無理だろうと思っていましたけど。2軍だったら『支配下の選手に何が負けてんだろう』っていう気持ちはあったので。練習をしっかりやればいけるかなっていう思いでしたね」。牧原大が言う“人”として認められるため、日々ユニホームを泥まみれにして白球を追いかけた。

 1月16日、自主トレを公開した牧原大はともに練習する育成選手4人の姿勢について「甘いですね」と一刀両断した。報道陣を前にあえて誇張したわけでもなく、偽らざる本音だった。

「僕らの時代と今の時代では全く別なんで。育成選手でも待遇はいいし、給料もいいし、環境も揃っている。その中で支配下を勝ち取れなかったら、それはもう自分が悪いだけじゃないですか。自分たちもわかっているはずなんです。育成選手は3年で契約が切れる。3年しかないと思ったら、みんな必死にやるでしょ。なんでそれをやらないのって。どこにそんな余裕があるのかって」

 近年、牧原大はことあるごとに育成選手に苦言を呈してきた。誰しも人に嫌われたくない、いい人でいたいという思いはある。それでもあえて発信してきたのは、育成選手に対する強い思いを持っているからだ。

「別に嫌われてもいいと思っていて。今はすぐに“パワハラ”と言われて、厳しく教えてくれる人がいない状況だけど、僕は言いますよ」。育成の厳しさを肌で知っているからこそ、後悔のない野球人生を送ってほしい。それこそが牧原大の“優しさ”だ。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)