天才打者が全てをさらけ出す。「子どもたちが野球を始めるきっかけになってくれればいいですね」。プロ14年目を迎える近藤健介外野手にとって初めての試み。自分のことだけを考えていても、野球界の発展にはつながらない。野球人としての“責任感”がモチベーションとなっている。
今年で8年目となる鹿児島・徳之島での自主トレがスタートした。今回もオリックスの西川龍馬外野手やロッテの藤岡裕大内野手らが、近藤から技術を学ぼうと参加。ホークスへの加入1年目となった2023年は本塁打、打点、出塁率の3部門でタイトルを獲得。昨季も首位打者、最高出塁率の2冠に輝くなど、いまや“球界最強打者”と呼ぶにふさわしい存在となった。
今回の自主トレからライブ配信アプリ「17LIVE(イチナナライブ)」とのコラボが始まった。まるで現地にいるように、一流選手たちの練習風景を見ることができるサービスだ。「あまりそういうのをするタイプじゃないと思っていたんですけど……」。そう自己分析した近藤だが、17LIVE側からの申し出を快諾した。その背景には、将来を担う子どもたちへの熱い思いがあった。
「相談をもらって、すごくいいことだなと。僕が子どものころにそういう配信があったら、絶対に見ていたと思う。徳之島に行きたくても、なかなか来られない場所だと思うので。プロ野球選手がどんな練習をしているのかを見てもらって、野球を始めるきっかけになってくれれば。そういう思いで引き受けました」
自身も少年時代を過ごした千葉で、ロッテの野球教室に参加したことがある。当時現役だった今江敏晃氏から指導を受け、目を輝かせた。「やっぱり純粋にかっこいいなって」。今や自らが子どもたちから憧れを向けられる存在となった。だからこそ、新たな一歩を踏み出そうと決心した。
ライブ配信には意外なプラス作用もある。「こっちは少し緊張しますけどね。『変なことはできないな』って。見られていることで、練習にしっかり集中できる部分はあります」。子どもたちの夢を壊さないためにも、超一流の技術をカメラ越しに伝えるつもりだ。
近藤が一番伝えたいこと。それは野球の面白さだ。「プロ野球選手でも、これだけ楽しく練習してるよって。練習って辛いことじゃないんだよ、みたいな感じとか。野球を始めるとしたら、やっぱり遊びからだと思うので。野球を続けていけば当然辛いこともありますけど、『プロの選手も楽しそうだな』って思ってもらえるのが一番いいと思うので」。
野球の魅力を伝えることも、超一流選手にとっての責務だ。そして、今季も“天才打者”に相応しいプレーを見せることが、野球界にとって何よりもの貢献になることは分かっている。「バッティングに完成はないので。より良い選手になるため、これからいろんなことを試していきたい」。衰えぬ向上心もまた、ファンを引き付ける大きな魅力だ。