栗原陵矢を支えた妻と甲斐家の存在 運動会も一緒に…巨人移籍も「どこに行っても特別」

巨人に移籍する甲斐拓也(左)とソフトバンク・栗原陵矢【写真:冨田成美】
巨人に移籍する甲斐拓也(左)とソフトバンク・栗原陵矢【写真:冨田成美】

“お兄ちゃん”といつも通りの別れ際…「クリ、また明日な」

 お互いに“最後”だとわかっていても、いつもと変わらない2人の空気感がそこにはあった。栗原陵矢内野手が契約を更改した20日。交渉を終え、球場を後にする栗原と並んで現れたのが、巨人にFA移籍することが決まった甲斐拓也捕手だった。

 甲斐のことを「お兄ちゃんです」と表現する栗原。「FA宣言をした時から本当にたくさん話をさせていただいて。いろんなことを聞いていましたし、どうなのかなってずっと思いながら。『どうなんですか?』って何回も言わせてもらいながら。決まった時は寂しかったですし、『あぁ、やっぱり行くのか……』と思いました」。

 契約更改後の会見では甲斐に対する尊敬と感謝の言葉、そして寂しさを口にした。遠征先のホテルでも野球談義に花を咲かせるなど、濃密な時間を数多く過ごしてきた2人。加えて、栗原にとっては結婚して初めてのシーズンでもあった。野球に集中できる環境でプレーできたのは妻と甲斐の家族のおかげだと明かす。

 今季の栗原はチームの主軸として140試合に出場した。シーズン序盤は思うような結果を出せずに苦しんだ時もあったが、柳田悠岐外野手が怪我で離脱してからは主に3番を任され、リーグ優勝に貢献。3年ぶりに20本塁打を記録するなど、その活躍を球団も高く評価した。そんな栗原を支えてきたのが、結婚1年目のシーズンを“戦い抜いた”妻の存在だった。

「非常に大きかったです。体の部分よりも気持ちの面での浮き沈みが結構あるタイプなので、そういった意味ですごく支えられました。あとは、1年間怪我なくプレーできたのも、奥さんがサポートしてくれたことが1番だなと思うので。本当に感謝してます」

 苦しみも喜びも分かち合い、妻とともに歩んだことが今季の好成績につながった。そして、手探りばかりの「新婚シーズン」を送った栗原家を支えていたのが甲斐家だったという。

「甲斐さんの家族には本当に優しく接してもらいましたし、子どもたちもすごく遊んでくれます。僕の奥さんが福岡にいて1人だったので、助けてもらったことが多かったですね」

 甲斐の息子が参加する運動会にも2人で一緒に応援に行くほどの間柄。その関係性は他人には計り知れないほどの深さがある。「特別です。どこに行っても特別であることは変わらないですし、そこの関係性が変わるわけではないです」。栗原にとっては甲斐だけではなく、その家族も大切な存在。栗原ファミリーにとって甲斐家は「理想の家族」になっていた。

 この日、みずほPayPayドームに来るのが最後だった甲斐を、家族が迎えに来た。すぐに駆け寄った栗原と嬉しそうに会話をし、プレゼントを渡していたのが甲斐の愛息だった。「ありがとう。またね」と優しい笑顔で手を振る栗原。「クリ、また明日な」と甲斐もいつも通りの言葉でドームを後にした。

「本当にすごく気にかけていていただいて、そういう人のおかげで頑張れたっていうのもあります。一緒にいた時間はすごく長いんで。そこはまたもっと特別かなと思います」。1人で車に乗り込む栗原。その背中からは寂しさが伝わってきた。

(飯田航平 / Kohei Iida)