上林誠知の単独インタビュー…3日連続公開の第1弾は「VIVAポーズ」について
鷹フルでは前ソフトバンクで、現在は中日でプレーする上林誠知外野手の単独インタビューを行いました。3日連続掲載の第1弾、テーマは「VIVAポーズ」についてです。4月27日の広島戦(バンテリンドーム)で放った1号ソロ。ベンチ前で行ったパフォーマンスの真相とは? また、ファンの方が流した涙を見て、今も愛されていると実感をした出来事が……。新天地のシーズンを、包み隠さずに振り返っていきます。
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名古屋での生活を始めてから、1年が過ぎようとしている。「だいぶ慣れました。基本的に使うのは新幹線なんですけど、(本州でも)真ん中なので、どこに行くにも近いですし」。リーグが異なる2球団を経験した。「名古屋のファンも福岡と同様、熱いので。皆さんに応援してもらえるように、ファンになってもらえるように活躍したいです」と、スタンドからの声はしっかりと届いていた。
2014年ドラフト4位で仙台育英高からプロ入りした。中日1年目の今季は46試合に出場して打率.191、1本塁打、3打点に終わった。来年8月には30歳を迎える。自分自身のキャリアを、どのように考えているのか。
「来年が本当に最後。来年できなかったらそのまま終わりだと思っています。今年、移籍1年目でチーム自体には慣れたので。1年目で遠慮していた部分もあったし、みんなとも仲良くなって、チームがどういう感じなのかも掴めたので。今はもう、絶体絶命というか。背水の陣、そんな立場なので」
11月30日から2日間、自身がプロデュースするアパレルブランドのポップアップストアが福岡市内で開催された。昨年は長蛇の列が生まれて待ち時間が発生。今年は整理券制にするなど、1人1人のファンとの交流を楽しんだ。上林も店内に立ち、写真撮影や商品の紹介を行なっていた。中には、ツーショットを撮れた嬉しさのあまり、泣き出す女性ファンもいた。
今も多くのファンが自分を支えてくれていることを、身を持って知った。「福岡を離れてもあれだけの人が来てくれて嬉しかったですね」と、率直な思いを口にした。「自分が残してきたものでもある。どんな状態でも、応援してくれたし、離れていても応援してくれていると実感しているので。あとはちゃんと名古屋の方でも頑張っていますというところを見せないとダメですね」。ホークスとドラゴンズ、両球団のファンへの思いに応えたいというのは、常に上林が抱くモチベーションの1つだ。
新天地に移籍したシーズン。「環境が変わって、どう変わるのか期待をしていた部分もあったんですけど、うまく噛み合わなかった」と反省しながら振り返った。自分なら、もっとできる。周囲の変化が好影響を及ぼすと期待もしていたが、結果には繋げられなかった。2022年には右アキレス腱断裂という大怪我を経験した。現状は「たまに疼くんですけどね。スピードとかは戻ってきているので、そういうところではちょっとずつ戻ってきていると思います。自分の感覚ではありますけど」と少しずつ馴染んできている。
上林なりに苦しんだ1年だったのは間違いない。その中で、久々の感覚を噛み締めた出来事もあった。4月27日の広島戦(バンテリンドーム)で1号ソロを放った。1軍での本塁打はホークスでの2022年4月23日の日本ハム戦(札幌ドーム)以来。「(印象に残っているシーンは)あのホームランが1番じゃないですかね。2年ぶりになってしまいましたし、あのポーズもちょっと話題になっていましたよね」。待望だった中日としての初アーチを架けると、ベンチ前で人差し指と親指を立てながら、テレビカメラに“パフォーマンス”をした。
「特に深い意味はない」と語っていたが、2024年ホークスのスローガンでもあった「VIVA」のポーズに似ていた。シーズンを終えて、改めて本人に理由を聞くと「あからさまに言っちゃうとあれかなと思ったんで柔らかく言ったんですけど。あれはもともと、明らかにVIVAをやるつもりでした」とキッパリ言った。名古屋はもちろん、福岡にいるファンを喜ばせたいという思いは、今も心のどこかで抱いている。
2025年の交流戦。中日との3連戦は、ホークスの本拠地で行われる予定だ。「その時は、ブーイングが起こるほど活躍していたいですね。それが自分の精いっぱいの恩返しだと思うので」。感謝と、謝罪。ファンへの思いを問われると、背筋を伸ばして、こう答えた。
「(福岡の)ファンは来年会えると思う。ホークスはずっと首位でいてもらって、自分が打って3連勝したところでビクともしないゲーム差をつけてもらえれば自分がいくら打っても大丈夫だと思うので。それくらいの位置にいてもらいたいですね。中日ファンは今年は期待して獲ってもらったにもかかわらず、不甲斐ない年で終わってしまった。この秋で体もいい感じできていて、技術的にも上がってきている。自信はあるので、悔いがないようにやりたいです」
福岡と名古屋で、今でも応援してくれる人の“愛”はしっかりと感じている。上林は「ブーイング」と言ったが、みずほPayPayドームを訪れるファンの方々なら、起こるのはきっと万雷の拍手だけだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)