2度目の契約更改交渉…80分にも及ぶ話し合いの末にサイン「覚悟ができた」
「周りの環境のせいにしないで、自分がやるべきことを1年間できるのか、どうか」。球団からの思わぬ評価だった。
ソフトバンクのリチャード内野手が6日、みずほPayPayドームで契約更改交渉に臨み、現状維持の1000万円でサインをした。70分にも及んだ11月22日に続き、2度目の交渉。話し合いが80分を超えたところで、会見場に姿を見せた。「非常にいい会話ができました」。年に1回、球団側と直接の会話ができる貴重なタイミング。「覚悟」という言葉を繰り返し、自分にも言い聞かせているようだった。
「今までは、自分が不甲斐ないから『すみませんでした』『契約してもらってありがとうございます』という気持ちだったんですけど。今回は、そういう自分でも来年やらないといけないという気持ちの重さが違っていたので。不甲斐なくても、来年このチームでプレーして、戦力としてやらないといけない覚悟があったので。今までとは違う契約更改になりました」
1軍では15試合出場にとどまり、打率.226、0本塁打、1打点。ウエスタン・リーグでは18本塁打を放ち5年連続本塁打王を獲得するなど、秘めるポテンシャルは誰もが認めるところだ。「(サインをする)覚悟は、ドームに来る前からできていて、それを思い出して言えた感じです」。11月22日から2週間、リチャードなりに気持ちの整理をして、決意を持ってこの日を迎えた。
同席したのは三笠杉彦GM。80分にも及んだ理由に「基本的にはこの前に話したことと同様です。(リチャードは)率直にいろいろと話してくれるタイプなので」。疑問に思ったことをしっかりと言葉にしてぶつけてくれるから、少し時間が長くなったと明かした。そして、球団の思いを代弁した。
「彼が覚悟をするために話をしました。彼はチャンスがないと言っているけど、僕らはあると思っている。外的環境によって、厳しい状況だから覚悟ができないということではなくて、やはりプロ野球選手なので。自分がコントロールできる、やるべきことをやってチャンスを待つみたいな考え方が大事なんじゃないかという話をしました」
一塁には山川穂高内野手、三塁には栗原陵矢内野手という高い壁がある。日本代表級の競争相手がいるのは、球団側も当然、理解している。その上で「チャンスがあると思っている」とキッパリ言った。それだけポテンシャルを認めている証でもあり、課題があるという厳しい言及でもある。「僕らとしては、頑張っているのはわかるけどもっとやれることがあるんじゃないか、ということです」。交渉の席でリチャードにも伝えたことを、明かした。
「うちは層が厚くてポジション、役割で言うと『なかなかチャンスが得られない』ということについて、どう考えたらいいのか、と。頭の整理がつかないということでしたので。いずれにしろ“やるべきこと”とは結果を出すための準備を最大限、準備をすること。いうほど、(リチャードは)チャンスがないとは思っていないです。チャンスがないと言っていることについて『こういう考え方をすれば、チャンスがあると思えるんじゃないか』、やるべきことをすればチャンスを得られる確率は上がってくると、説得をしました」
「具体的に取り組むべきことというよりは、考え方みたいなところです。自分がコントロールできないことと、できることがある。心を整えて、周りの環境のせいにしないで自分がやるべきことを1年間できるのか、どうか。そういうことところに、やや課題があるんじゃないかと思っているので。(球団は)メンタルコーチも導入していますし、しっかりと整えてやってもらいたいという話が多かったです」
契約更改とは、球団が選手を評価する年に1回の場だ。さまざまな基準がある中で、三笠GMも「結果に基づいて査定をします。数字をお金に結びつけるのが(プロ野球選手の)仕事なので」とスタンスを強調する。リチャードに対して「やや課題がある」と話したのは、どんな部分なのか。
「取り組みがどうだ、というよりは、1年を通して『結果が出る時と出ない時がある』というのが、結果を見ればわかるので。どういう理由があってそうなっているのか、自分で分析もしてもらいたいし。それを自分で解決できるような環境を整えてもらいたいということで指導者、動作解析、メンタルコーチ、そういうものを僕らとしては頑張って揃えているつもりなので。そういうものを(生かしながら)プロの1人として、課題を認識して、主体的に考えてもらいたいという話をしました」
プロ野球選手である以上、評価されるのは努力ではなく、結果。三笠GMがリチャード自身の日々の姿に言及することはなかったが、“調子の波”に課題があることは数字を見れば一目瞭然だと言い切った。「心」を整えて、まずは自分と向き合ってもらいたいというのが球団の願いだ。今は「自分を変えたい」と、“師匠”山川とともに自主トレを行なっている。覚悟を抱く8年目は、どんなシーズンになるのか。
(竹村岳 / Gaku Takemura)