打率でも本塁打でもなく、狙うは四球——。今宮健太内野手が4日、契約更改に臨み、現状維持の年俸3億円プラス出来高払いでサインした。今季は133試合に出場して打率.262、6本塁打、39打点をマーク。2年ぶり4度目となるベストナインに輝くなど、リーグ優勝に大きく貢献した。
契約更改を終え、取材に応じた今宮が来季の目標に掲げたのは、意外な項目だった。「来年はやっぱりフォアボールですかね。そこのキャリアハイっていうところを目標にしたいなと」。
全試合出場や打率3割、2桁本塁打などを掲げる選手も多い中で、あえて口にした四球数。その背景には小久保裕紀監督の一言があった。自らの「生きる道」を再認識させられた出来事とは——。
「今年に関しては2番に入ることが本当に多かったので。どういった形でつないでいこうかなという思いはありましたし。特に今年の春、台湾の楽天との試合で(小久保)監督が『今宮のフォアボールがきっかけで』ということを言ってくれた時に、『今年はこの形でいけばいいんだ、これでスタートしていけばいいんだ』っていうのを再確認できたことは大きかったです」
振り返ったのは今年2月24日、対外試合の初戦となった台湾・楽天戦だった。3回無死一塁で今宮が四球を選ぶと、続く柳田悠岐外野手の2点適時二塁打、山川穂高内野手の2ランが飛び出すなど、1イニング5得点を奪った。試合後、小久保監督は「今日のポイントは今宮の四球です。あそこが大量得点につながった。(走者を)返せるバッターが中軸にいるだけに、あの四球は光りました」と絶賛していた。
記事を通して指揮官の発言を見たという今宮は背中を押された思いがした。「僕がホームランを打っても、あまり評価されないので。四球を評価してくれるのであれば、そこだけを目指してやっていいいのかなと思いました」。
シーズンに入っても考えがぶれることはなかった。今季もぎ取った46四球はキャリア2番目の多さ(最多は2016年の47四球)で、出塁率も2番目に高い.331(最高は2022年の.352)をマーク。きっちりと2番打者としての役目を全うした形だ。
「特に今年は山川が4番に入って、3番は柳田さんで。本当にリーグを代表する強力打線になったので。めちゃくちゃ(つなぐ)意識はしましたね。来年がどうなるのか正直わからないですけど、スタイルとしては今のままでいいのかなと思っているので。どの打順を打つとしても、次につないでいくことだけ意識してやっていきたいなと思います」
若いころは「打てなかったらすぐにコロコロと形を変えて、1つのことをやり続けられなかった」と振り返る今宮。リーグ優勝の大きな要因となった強力打線の中で、主役にならずとも名脇役としてサポートする形を選んだ33歳。ブレない男の存在はこれ以上ないほどに心強い。