鷹フルは、ソフトバンクの正木智也外野手を単独インタビューしました。全4回を4日連続で掲載いたします。第3回のテーマは「日本シリーズ」について。6戦中、4戦でベンチ外だった頂上決戦。「本当にいろんな気持ちがありました」と、胸中を激白しました。1軍の戦る中で感じた悔しさと、見つめ直した自分の現在地とは――。
DeNAに2勝4敗で敗れ、惜しくも日本一を逃した。正木にとっては初の頂上決戦。1戦目と3戦目にスタメン出場したものの、6打数無安打に終わっている。それ以外の4試合はベンチ外。悔しさだけが残る大舞台となった。少し時間が経った今、日本シリーズをどのように振り返るのか。
「CSは自分の中で良かったなと思います。だけど、日本シリーズは、1戦目はスタメンで打てなくて。3戦目もスタメンで、打席内容は良かったんですけど、飛んだところが悪かった。6の0で自分の中ではそんなに悪い感じはしなかったんですけど、その後は全部ベンチ外でやっぱり悔しかったです。短期決戦なので、わからないですけど、そこまでの信頼をシーズンでまだ掴み切れていなかったんだなって思いましたし、自分の実力不足。もっともっと打たないといけないなと思いました」
6度の凡退のうち、外野フライが5回だった。Hのランプは灯せなかったものの、大舞台でも自分の形でスイングすることができた。そして、首脳陣がくだしたベンチ外という采配からも、メッセージを受け取っていた。「スタメンじゃない日にベンチを外れるということは、僕は後からいくんじゃなくて、本当にスタメンで出ないとダメなんだなって思いました。いろんな気持ちがありましたね」。代打や代走から出場していくタイプではない。改めて自覚が芽生える出来事にもなった。
「自分も出たかったですし、まだまだ戦力と見られていないと思ったので。その悔しさを力に変えるというか、同じ悔しい思いをしないように。もっと信頼を勝ち取れるようにしたいなと思いました」
ベンチ外となったことは、試合のたびに奈良原浩ヘッドコーチから伝えられた。通達のタイミングは「練習前」で、グラウンドに出てきた時点で、自分に出番がないことはわかっていたそうだ。チームが全力でDeNAと戦っている時間も「(みずほ)PayPayドームだったらウエート場にもテレビがあるので、それを見ながらトレーニングをしたりできたんですけど、横浜はウエートもできなくて、ずっと勇(野村)さんと話しながらテレビを見ていました」と明かした。もどかしさを抱えながら、画面越しに展開を見つめていた。
川村友斗外野手は、1戦目の正木の姿に「すごく緊張していました。練習中から緊張している感じが伝わってきましたし、セレモニー中もずっとそんな話を2人でしていました」と話していた。正木自身も「始まるんだなって、ソワソワしていました」と、少し浮き足立ってしまったと振り返る。そんな緊張をより大きくさせたのが、DeNAのスラッガーたちの存在だった。
「ビジターのあの声援の中で、1戦目スタメンって言われた。ナイターだし、スタジアムで屋根がないから、フライとかも怖かったです。打席はそんなにだったんですけど、守備がめっちゃ緊張しました。牧さん、宮崎さん、オースティンとか、とんでもない打球がくるんじゃないかって思って。結局1球も飛んでこなかったんですけど、それで緊張はしました」
日本シリーズを経験したしたことで感じたことはそれだけではない。大舞台でも普段と変わらずに躍動する先輩の姿が胸に残る。今宮健太内野手は、敢闘賞に輝いた。柳田悠岐外野手は、敗れれば終戦という中で迎えた第6戦で反撃の2ランを放った。
「あの短期決戦で打てるのは、すごいと思いました。なんていうんですかね……。シーズンめっちゃ打っていても、日本シリーズで打てなかったら、打てない印象で終わるかもしれないじゃないですか。決してそんなことないんですけど。そのシーズン活躍したみたいに終わることができるので。そういうところで打てるのがやっぱり勝負強いなと思いますし、打てる人がレギュラーになっていくんだなって思いました」
“終わりよければすべてよし”というわけではないが、日本中が注目する舞台で結果を出せばファンの記憶にも深く刻まれることになっただろう。緊張や興奮、ベンチ外で味わった悔しさも、絶対に忘れない。さまざまな感情が胸に刻まれた日本シリーズだった。