日本S「何回目ですか?」…中村晃に質問、驚きの答え 川村友斗が語る“大舞台”の空気

ソフトバンク・川村友斗【写真:竹村岳】
ソフトバンク・川村友斗【写真:竹村岳】

プロ3年目で日本シリーズに初出場…緒方&正木と分かち合った気持ち

 ホークスが最高の形で福岡に帰ってきた。26日に開幕した「SMBC日本シリーズ2024」。ソフトバンクが敵地・横浜でDeNAに連勝し、対戦成績を2勝0敗とした。28日は福岡への移動日。鷹フルの電話取材に川村友斗外野手が応じた。自身初の大舞台で驚いたのは、あまりにも堂々とした先輩の振る舞いと、自分と同じく緊張する同学年の姿。「緊張するな、やばいやばい」。浮き足立ってしまいそうな空気で、中村晃外野手の言葉には思わず目を丸くするしかなかった。

 2021年育成ドラフト2位で仙台大からホークスに入団した25歳。3年目の今季は、3月19日に支配下登録を勝ち取った。シーズンでは88試合に出場して打率.268、1本塁打、14打点。9月22日の楽天戦(みずほPayPayドーム)ではプロ初本塁打も記録した。日本ハムとのCSファイナルステージにも出場し、日本シリーズではベンチ入りを果たした。

 日本一を決める大舞台。26日の初戦は9回に代走で出場し、2戦目も9回から守備固めとしてライトに就いた。2試合を終えて、この日の夕方ごろに帰福。初めての経験を重ねて、どんな感情を抱いたのか。

「相手の応援の大きさもすごかったですし、試合前のセレモニーもカッコよくて圧倒されました。(レギュラーシーズンの)開幕戦も初めてだったので緊張感があったんですけど、1年間を戦っての日本シリーズっていうのは、またすごかったです」

 26日、代走から途中出場したシーンを振り返る。川村と同じタイミングで支配下登録された緒方理貢外野手が、8回から先に出場をしていた。「僕もいつも通りでいたつもりなんですけど……。先に緒方さんが守っていたじゃないですか。『やべえよ』って言っていましたし、試合前から(2人で)『緊張するんだろうな』って話をしていたので。緒方さんでも緊張すると思ったら安心しました」と苦笑いする。フワフワしてしまいそうなのは、自分だけではなかった。

 同期入団で同学年の正木智也外野手も、1戦目に「6番・左翼」でスタメン起用された。3打数無安打で、4打席目には代打を出されて途中交代となった。川村は「正木もすごく緊張していました。練習中から緊張している感じが伝わってきましたし、セレモニー中もずっとそんな話を2人でしていました」と明かす。お互いに気持ちをほぐすように、「やばいやばい」と言葉を交わした。アマチュア時代から多くの経験を積んだ若鷹たちも、初めての日本シリーズでは特別な感情を抱いていた。

 一方で、堂々とする先輩の姿にも驚いた。振り返るのは、中村晃とのやり取りだ。

「1戦目のセカンドアップをしている時に、晃さんが同じ列だったんです。『晃さんって日本シリーズ何回目ですか?』って聞いたら、『今回で7回目だわ』って言っていて……。『え。6回中、6回優勝しているんですか?』って言ったら『うん。正直、新鮮味はないかな』って言っていたので、単純にすごいなって思いました」

 通算1427安打の中村晃は、柳田悠岐外野手や今宮健太内野手らとともに、常勝時代を築き上げた1人だ。どんな状況でも毎シーズン、日本一を目指すホークス。1軍において、自分の身に起こる全てが初体験だった川村は、あまりにも浸透した“常勝”の雰囲気を実感した。「先輩方はすごく落ち着いていました。慣れているというか、当たり前のような雰囲気を感じましたし、すごいなと思いました」。

 リーグ優勝を果たした9月23日のオリックス戦(京セラドーム)。優勝が決まった瞬間、左翼にいた緒方は「みんな『はいはい』みたいな。僕はもっと喜びたかったんですけど、『これがホークスの喜び方か』って思いました」と、驚きも含めて振り返っていた。川村も「高校、大学で優勝した時みたいにマウンドで集まるのかなって思っていたんですけど、『よしよしよし』みたいな感じでした」と、緒方が語った印象に共感した。心から喜べるのは、日本一になった時だけ。待望の瞬間まで、あと2勝だ。

 リーグを勝ち抜き、選ばれた選手だけが立てる日本シリーズ。「すごい経験をさせてもらっているなと思います。なんとか福岡で日本一を決められるようにしたいです」。電話越しに意気込む声は、とても頼もしかった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)