9月16日のオリックス戦で右足首を負傷…翌日は松葉杖をついて本拠地を来訪
人一倍の強い気持ちを持っていても、堪えられないほどの痛みだった。ソフトバンクの近藤健介外野手が30日、1軍の試合前練習に参加した。軽いキャッチボールを行った後、フリー打撃などで調整。「バッティングはもう大丈夫です」。今だから明かせるのは、負傷した翌日の行動について。首脳陣を驚かせたのは「ティーバッティングしてみます」という一言だった。
近藤が負傷したのは、16日のオリックス戦(京セラドーム)だった。4回2死一塁で二盗を試みてスライディングをすると、直後に苦悶の表情を浮かべた。プレーは続行したものの、次の打席で代打を送られて交代。2日後の18日、球団から「右足関節捻挫」と診断されたことが発表された。それまで全129試合に出場して打率.314、19本塁打、72打点。頂点まであと一歩というところで、チームは大黒柱を欠くことになった。
リーグ優勝が決まった23日のオリックス戦(同)。近藤は松葉杖をつきながら歓喜の輪に加わっていた。1週間が経ち、早くもチームに合流。右足首を負傷した瞬間、どんな状態だったのか。
「腫れましたね。腫れていましたし、それよりも痛かったですね」
当然、右足首を痛めた後に首脳陣と京セラドームのベンチ裏でやり取りをした。奈良原浩ヘッドコーチも「『どんな感じ?』って聞いたんですけど。そしたら『行けるかもしれないです』って言うから、こちらからも『とにかく無理はするな』とは伝えていたんです」と語った。患部に厚くテーピングを巻いて、再びグラウンドに戻った近藤。次打者・正木智也外野手の中飛では、小走りながらもホームにまで帰ってきていた。「アドレナリンが出ていたんだろうね。かなり痛かったと思いますよ」と、奈良原コーチも代弁する。
翌17日、近藤は松葉杖をつきながら、みずほPayPayドームに姿を見せた。小久保裕紀監督も含め首脳陣に状況を説明したが、当時について奈良原コーチは「『ティーバッティングしてみます』って言ったんです。(こちらは)『いやいや、無理でしょう。歩けないんでしょ?』って思ったけど。とりあえずやってみて、そしたら『やっぱり痛いです』ということでした」と舞台裏を明かした。最後の最後まで、出場することを諦めなかった。そんな姿勢に首脳陣は、厚い信頼を寄せる。
「少々(痛くても)行ける時は試合には出るというスタンスは、さすがレギュラーだと思います。試合に出ていく責任感みたいなものは人一倍強いと思いますよ。今回はさすがに無理でしたけど、1つ間違えれば骨が折れているかもしれないくらいだったわけですし。テーピングをして確認作業をすること自体が頼もしいです」
近藤は、バットを振り始めた時期は「4日くらい前(26日ごろ)ですね。違和感はありますけど、痛みはありません。(想像よりは)早くきていると思います。松葉杖も、治りを早くするためだったので」という。トレーナーの協力や、徹底的なアイシングなど、1日も早い復帰を目指してきた。一方で走ることに関しては、まだジョギングすらできていない段階。「歩いたり(だけ)でも痛い日もありますし。そんな感じです」と、慎重な姿勢は崩さない。
昨年秋に小久保監督が就任して以降、すぐにレギュラーとして名前を挙げたのが柳田と近藤だった。期待と責任を背負い、誰よりも強い意思でグラウンドに立とうとしてきたからこそ、無念の離脱だった。「全試合に出たい気持ちもありましたし、その中で優勝というタイトル、個人のタイトルもそうですし。全試合に出た中で(獲得したい)というのはありましたので、悔しい思いはありました」。今後についても「上手くいけば、(10月)2週目には試合の打席に立ちたいとは思っています」と見通しを語った。日本一になるために、今できることに全力を尽くす。
10月1日以降も、みずほPayPayドームを訪れて調整する予定だという。「まだ戦いは続くので、しっかりと治せるように。CSを目指している感じではいます。走れなかったらスタートで出るのは難しいと思うので。まずはランニングの方で(状態が)上がるかどうか、だと思います」。一戦必勝のポストシーズン、絶対にチームの力になりたい。
(竹村岳 / Gaku Takemura)