5球で手にした初勝利…「最高です」
初勝利と母の涙に喜びを隠さなかった。ソフトバンクは22日、楽天戦(みずほPayPayドーム)に11-5で勝利した。この試合で初勝利を収めたのがドラフト2位ルーキーの岩井俊介投手だった。「最高です!」と満面の笑みを浮かべた右腕。初勝利はもちろん、母親を喜ばせることができたことが、なにより嬉しかった。
試合は序盤からソフトバンクのペースだった。2回には一挙5点を奪い、試合を優位に進めていた。しかし、先発の大津亮介投手が楽天打線に3点を奪われると、小久保裕紀監督は見切りをつけ、5回2死二塁で岩井をマウンドへ送り出した。
「バッターに向かっていく強い気持ちを持って抑えに行こうと思っていました」。その言葉通り、気迫のこもった5球を投げ込み、マウンドで躍動した。低めの変化球で伊藤を三振に切って取り、勝利投手の権利を手にした。そのまま試合に勝ち、右腕についた「1」の数字。試合後、最初に報告したのが母だった。
「ヒーローインタビューを見ていたみたいで『泣いちゃったじゃん』って言っていました」
試合後、お立ち台に上がった岩井は「やっと初勝利を挙げることができました。今まで育ててくれたおかげだと思うので、これからもどんどん活躍して頑張っていきたいと思います」と、感謝の言葉を大観衆の前で伝えた。それをテレビで見ていた母は嬉しさのあまり、涙していたそうだ。
以前、初勝利を挙げたらまず誰に報告をするか、と聞いた際には「やっぱり家族。お父さんお母さん。家族LINEに即連絡ですね」と話していた。その言葉通り、いの一番に報告した右腕。母の涙を「僕も嬉しかったです」と照れ笑いを浮かべながらに明かした。
入団してから密かに抱いていた思いがある。支配下のルーキーは7人中5人が投手だ。その中でも初勝利を最初に手にすることを目標にして腕を振ってきた。しかし、球団のルーキーで“一番乗り”は澤柳亮太郎投手、その次は大山凌投手が手にしていた。
同期の勝利は岩井にとっても大きな意味があった。「いやもう悔しいですね。悔しかったです」。その思いが、リードする展開で試合を任せてもらえるまでに成長した原動力になっていた。13登板目で掴んだ白星に「最高です! やっと(澤柳と大山に)追いつきましたね」と、喜びを爆発させた。
この日の勝利でホークスの優勝へのマジックナンバーは「1」となった。「こういう緊迫した試合で投げられて、勝ち星を挙げられたのは本当に嬉しいです」。2軍では悔し涙を流すなど、ここに来るまで苦労を重ねてきた。その悔しさがチームを勝利に導く投球へと繋がっている。母の涙と初勝利。岩井にとって忘れられない日になった。
(飯田航平 / Kohei Iida)