小久保監督もガッツポーズ連発…柳町達のサヨナラ打を先輩4人が語る
先輩たちに「まだ達がいる」と思わせるほど、存在感が光り輝いている。土壇場でチームを勝利に導いた一振りを、4人が絶賛した。
ソフトバンクは21日、楽天戦(みずほPayPayドーム)に3-2で勝利した。1点を追いかける展開の中、9回2死一、二塁で柳町達外野手が代打で登場。左越えの2点三塁打を放ち、サヨナラで試合を決めた。土壇場で試合をひっくり返した一撃を、4人の先輩が大絶賛。柳町の存在感について甲斐拓也捕手、周東佑京内野手、今宮健太内野手、中村晃外野手が口を開いた。
相手先発は瀧中で、序盤から追いかける展開となった。7回に山川穂高内野手の32号ソロで1点を返したものの、1点ビハインドのまま9回に突入。楽天ベンチはリーグトップの31セーブを挙げている守護神・則本をマウンドに送った。安打と申告敬遠で1死一、二塁。中村晃が空振り三振に倒れた直後に「代打・柳町」がコールされた。5球目の直球を振り抜くと、打球は高々と舞った。2人の走者が生還して、一振りでヒーローの座を射止めた。
8月4日の日本ハム戦に続く、今季2度目のサヨナラ打。先輩たちが駆け寄ってくる景色を「2回目だったんですけど、2回目も最高でした」と笑顔で振り返った。今季は65試合に出場して打率.275、4本塁打、35打点。ここぞの場面で勝負強さが光り、数字以上の存在感を見せている。そんな柳町の姿を、どのように見ていたのか。直前で三振を喫した中村晃は、感謝の言葉を口にした。
「本当によかったです」と第一声で語る。一塁ベンチの前では、最高の笑顔で柳町とハグを交わした。「それはそうですよ。この時期のこの1勝は、すごいものです」。あとストライク1つでゲームセットというところから白星を拾ったのだから、価値のある一打だった。今宮も「勝てばいいと思っていますので。まだ残りはありますし、ゼロになるまで頑張るだけです」と中村晃の考えに同調した。歓喜の目の前にまでたどり着いても、リーダーたちは絶対に隙を見せない。
捕手にとっても、ロースコアで進んだしびれる試合展開だった。バッテリーの頑張りを、最後に柳町が勝利に変えてくれた。マスクを被った甲斐は「達が決めてくれましたし、この時期はどんな勝ち方でも勝てればいいので」と安心した表情だ。5年目を迎えて、年を重ねるごとに勝負強さが光る柳町のバット。正捕手としても「もちろん頼もしいです。これまでもたくさん助けてもらいましたし、そこは変わらないですね」と、感謝しきりだ。
選手会長の周東は、柳町の元へ最初に駆け寄った1人だった。「(左翼手の頭上を)越えるかなとも思っていたんですけど、『越えてくれ!』って思っていました。今日のは嬉しかったですね」。決着がついたのだから、感情を隠す必要はなかった。ホークスの試合後に日本ハムが敗れたため優勝へのマジックナンバーは2。ついに“王手”をかけた。「全然違いますね。残り試合もありますし、この時期の1勝は大きいです」と頷いた。
登録は内野手だが、今季は中堅手として固定され、試合前練習も外野手としてのルーティンを過ごしてきた。準備中にも柳町とは言葉を交わしているところを頻繁に見かける。2歳年下の後輩は、どのように見えているのか。最大級の“褒め言葉”を送った。
「本当に、『後ろにまだ達がいる』っていうのがデカいですね。代打としてもですし、そういう位置で(試合に)出ていく達はすごいです。それが達なのか、晃さん(中村)なのか、っていうのもありますけど。シーズンの序盤でも晃さんが控えていると考えると心強かったですし。全員で勝っていくのは変わらないんですけど」
周東自身、今季から選手会長を託された。「優勝しかない」と宣言して飛び込んだシーズンだ。いよいよ目の前にまでたどり着き、「本当に優勝しかないと思ってやってきました。1軍メンバーだけじゃなくて、若い力と一緒にここまで来ました」と、もう1度足元を見る。ここまで40盗塁を決め、3度目のタイトルも視野に入っているが「そこではないというか。ヒットの本数だとか、積み重ねるところを積み重ねていきたいです」と強調した。最大の目標である歓喜まで、あと少しだ。
リーグ優勝となれば、2020年以来4年ぶり。同年、柳町は12試合出場だった。終盤戦のプレッシャーは「2022年、あと1勝のところで負けた試合も経験しています。それに似たような重圧かなと思います」と表現した。これまで何度も優勝を経験し、リーダーとなってきた先輩たち。柳町もきっと、一歩ずつ近づいている。
(竹村岳 / Gaku Takemura)