先発で触れた柳田悠岐の「優しさ」 印象的な出来事…モイネロが語る「絶対負けない」の意味

ソフトバンクのリバン・モイネロ【写真:栗木一考】
ソフトバンクのリバン・モイネロ【写真:栗木一考】

14日のオリックス戦で11勝目…ヒーローインタビューの「真意」は

「ホークス、今年は絶対、負けない」――。マイクを握って発した言葉は核心を捉え、ファンを喜ばせた。頂点に近づくシーズンを振り返ると、意外にも印象に残っているのは柳田悠岐外野手とのやり取りだった。

 リバン・モイネロ投手は今季から本格的に先発に挑戦するシーズンとなった。23試合に登板して11勝5敗。防御率1.89はリーグトップの成績だ。規定投球回にもすでに到達し、首位を走る現状に大きく貢献した1年。自分自身の言葉でチームの思いを代弁し、ファンを喜ばせたのが、自身が先発した14日のオリックス戦だった。

 相手先発はカスティーヨ。打線は4回に先制すると、5回、6回で大量9点を奪うワンサイドな展開となった。モイネロは6回を投げて87球、2安打無失点に抑える好投。中10日で迎えた登板で、しっかりと結果を残してみせた。ヒーローインタビューに選ばれると、「では最後に、日本語で締めていただけますか。マイクをお渡しさせていただきます」との“お願い”が飛んできた。

 モイネロにとっては、“ムチャぶり”だった様子。「うーん」と頭をかきながら、「ハーイ」とファンに手をかざす。そして答えたのが「皆さま、ホークス、今年は絶対、負けない」だった。リーグ優勝まであと少し。ファンにとっても、チームにとっても士気をあげるような言葉となった。キューバ出身の左腕はなぜ、この表現をチョイスしたのか。

「今年はチームの調子もいいですし、優勝も近いので。パワーがある言葉だと思って、言いました。優勝まで、もうあとワンプッシュ必要ですからね」

 ヒーローインタビューの際に苦笑いだったのは、「毎回聞かれますから。ちょっと話したくなかった」と照れ隠しだったよう。だからこそ、「来年は日本語(教室)のクラスにちゃんと入って、そういう時にちゃんと話せるようにしたいですね。目標はインタビュー全部、日本語で答えることです。『そうですね』みたいな回答ができるようになりたいです」と、どこまでも日本に馴染みたいと思っている。

 春先からチームは首位を走り、投打が噛み合った中でシーズン終盤まで突っ走ってきた。モイネロなりに思う今年の強さは、「難しい試合もありました。今でこそゲーム差はありますけど、ゲーム差が近い試合でも競り勝ってきた。難しい試合を勝ってきたことが、よかったんだと思います」と分析する。登板は週1回という先発投手だが、チームの一体感に結果で応えられるように、自分も腕を振ってきた。

「ロッカーの中でも、苦しかった時とかミスをしてしまった時でもみんなで励まし合っていたので、すごくいい雰囲気だったと思います」

 今季23度の登板で、印象的なチームメートとのやりとりはあったか。そう聞いてみると、名前を挙げたのは意外にも柳田だった。「ピッチングが悪かった時に『今日良かったね』ってやたら言ってきますね。(自分に悪かった内容を)忘れてほしいのかもしれないですけど、悪かった時に褒めてきます。悪くてマウンドを降りているわけですから、多分笑わせたくて、いい気持ちにさせるためにギータが優しく声をかけてくれているんだと思いますよ」とやり取りを明かす。それがギータのなりの気遣いであることは、モイネロ自身が一番よくわかっている。

「そういうのがパッと出てきますけど、全選手が手伝ってくれました」。17、18日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)では連敗を喫し、優勝へのマジックナンバーは「5」のままだが、一歩ずつ頂点に近づいていることは間違いない。「もちろん自分も貢献できた感覚はありますし、チーム全体として今年1年目の選手だったり(が活躍した)。野手も投手も、与えられたチャンスで打って、守って、いいプレーが多かったので。それが今の順位に繋がっているんだと思います」。ホークス全体から湧き立つ“活気”は、左腕も感じ取っていた。

 無茶振りではあったものの、「絶対に負けない」という表現でファンを喜ばせた。それだけモイネロの言葉に“説得力”が生まれ、頼もしすぎる主力としてシーズンを送った証拠だ。「優勝まで近くなっている実感も湧いてきましたし、チーム一丸になって勝ち続けたいと思います」。頂点まで、あと少しだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)