ソフトバンクは17日、日本ハム戦(みずほPayPayドーム)に2-3で敗戦した。序盤はリードを守っていたものの、6回に2点を奪われて逆転された。優勝へのマジックナンバーは「5」のままで、数字を減らすことができなかった。試合前には近藤健介外野手が登録抹消。打線の大黒柱として引っ張ってきた先輩に、栗原陵矢内野手がかけられた言葉とは――。
16日のオリックス戦(京セラドーム)、近藤は4回2死で二盗に成功した直後に苦悶の表情を浮かべた。右足首を痛めたと見られ、病院を受診。一夜明けたこの日も松葉杖をついて、みずほPayPayドームを訪れていた。小久保裕紀監督も「近藤は抹消します。抹消やから重たいに決まっている。(戦い方も)変えないといけないし、打順は変えますよ」と明言していた。
時間は待ってくれず、プレーボールとなる。初回にいきなりチャンスが訪れた。1死三塁から栗原が打席に入ると、一、二塁間を破る適時打を放ち先制した。「もう必死に打ちにいきました。先制点を取るバッティングができて良かったです」。8回1死一、三塁でも右犠飛で2打点目を記録。2位・日本ハムとの直接対決に敗れはしたが、チームの全得点をたたき出す働きで存在感を示した。
試合前に近藤と顔を合わせた。「任せたぞ」。短い言葉で、期待をかけられた。栗原の返事は「勘弁してくださいよ」だった。栗原らしい表現と言えば、そうかもしれない。だが松葉杖をつき、目指してきたリーグ優勝の目の前で離脱を余儀なくされた近藤の気持ちを考えれば、重かった。春先に自分が不振だった時、試合後の打撃練習にいつも付き合ってくれた。「クリ、わかったわ」。近藤が閃いたヒントがあったから、今の栗原がいる。
6月12日のヤクルト戦(みずほPayPayドーム)で、近藤は左翼守備の際に右手を痛めた。その時は小久保監督も「今後に響いてもらったら一番困る選手なので。明日は来てからになります」と心配していたが、翌日の試合にはスタメン出場。「迷惑がかかって無理なら無理だとは思っていましたけど、出られそうだったので」と、試合に出ることに誰よりも強い意欲を示してきた選手だ。
当然、栗原もその思いは知っている。「誰よりもハッスルする選手ですので。守備走塁においてもですし、そういうところを見て僕もガツガツ行かないといけないなとは思ってきましたね」。だからこそ近藤の無念は伝わってきた。「優勝するために(ホークスに)来たっていう話をしていましたし、そのタイミングでいられないのは残念だという話はしました」と、ベンチ裏でのやり取りを明かす。結果が全ての終盤戦。どんな形でも、ゴールテープを切るまでは走り続けるしかない。
小久保監督も「それしかないでしょう」と、今のメンバーで戦う覚悟だ。近藤の思いについても「本人は最後までやりたいという中で、最後……。本当はドクターストップなんですけど、(試合に出られるかどうか)確認したいと言ってきて、やっぱり自分でも『無理です』と。仕方ないです」と、受け入れるしかなかった。今後についても「思ったよりも早いかもしれないし、今日の時点では動くのは難しいと本人から言ってきました」と言及。これまでと同じく、一戦必勝を最後まで貫いていくつもりだ。
8回1死一、三塁のチャンス。一塁走者は周東佑京内野手だったがベンチは走らせることはせず、栗原に託した。深い位置まで打球を飛ばしたが、結果は右犠飛。1点差にはしたが、追いつくことはできなかった。悔しい表情を浮かべた理由も「あそこで一気に逆転するためには『あれじゃ……』とは思いました」。チームの状態を踏まえて、2点以上が必要だということはわかっていた。
自分への期待が大きくなることはわかっている。近藤と同じように栗原も「頑張るだけです。やるだけです」と、短い言葉で思いを表現した。たくさんお世話になった先輩から、思いを託された。応えるしかない。