小久保監督の“辛口評価”、正木智也は何を思う? 「うーん…」言葉を選び語る思いは

ソフトバンク・正木智也【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・正木智也【写真:荒川祐史】

5号2ランを放ったロッテ戦でも「監督の囲みの中で名指しで指摘を受けていた」

 指揮官の“辛口評価”を、どのように受け取っているのか。思いはやっぱり「認めてもらいたい」だ。ソフトバンクの正木智也外野手は、大卒3年目のシーズンで63試合に出場して打率.273、6本塁打、25打点。6月21日に1軍昇格して以降、勝負強さとパンチ力を生かした打撃で、右翼の座を掴みつつある。そんな正木に対して、小久保裕紀監督の口調はなぜか、いつも厳しい。

 12日時点で9月は打率.200。6番を任されているがゆえに、得点圏で続けて凡退してしまうこともあった。もう1度、上昇気流を描きたい中で、11日の楽天戦(楽天モバイルパーク)では6回1死から左中間に6号ソロを放った。それでも小久保監督は「いや、まあ、あのくらいは打ってもらわないと。あれくらい打たないと、来年危ないですよ」と、言葉少なだった。

 1日のロッテ戦(ZOZOマリン)では、5号2ランを放った。試合中の広報コメントで正木は「昨日(8月31日)の試合でチャンスで結果を出すことができず、試合後の監督の囲み中で、名指しで指摘を受けていたので、今日は何としても結果で応えようと意気込んでいました」と話していた。小久保監督の厳しい言葉に対して、明かした胸中とは――。

「辛口だとは思わないですね。仰っていることも『そうだな』って思いますし」

 2軍監督時代、指揮官は「(選手が自分のコメントを)見ているとわかっている」と明かしていた。1軍監督になってからも「褒めて育てるって、よく世間は言うんですけど。褒めたらその人の“当たり前の基準”が低くなるじゃないですか。人の成長を止めていると思うんですよね」と、自分の信念は不変だった。正木は「うーん……」と言葉を選びつつ、「言ってもらっているうちが“華”だと思いますし、期待に応えられるようにもっと頑張りたいです」と、静かな口調で力を込める。

 2022年、正木は開幕スタメンを掴んだが、なかなかヒットが生まれなかった。4月19日に2軍降格となり、当時の小久保2軍監督を含めた首脳陣と打撃面を改善することになった。その時も正木は「小久保さんは1番信頼している方なので。その方に教えてもらえたのはありがたいことで、自分自身も納得しましたし、嬉しいなと思いました」と語っていた。プロ1年目から自分を知っている存在。2人だけの関係が、確かにある。

「1年目から見てもらっていて、自分のバッティングをわかってくれている人だと思います。これまでもいろんなアドバイスをもらって、全部自分に響いているものばかり。本当に信頼している方なので、その人(小久保監督)に言われたことは記者の方に(囲みの場で)言っていようが、受け止めるようにしています」

 毎日、試合が終わればメディアに小久保監督のコメントが飛び交う。正木も「毎日見るようにしています」と、どんな言葉も逃げずに受け止めている。チームが首位を走り続けていても、指揮官は常に選手たちの空気を引き締めている。「(小久保監督は)隙が生まれるのを嫌がる方だと思うので、そういう意味で2軍の時からそうされてきたと思います。全力疾走を最後までやるとか、そういうところも含めて、勝負事において大事かなと思いました」と、自分にも言い聞かせていることばかりだ。

 3年目のシーズンが終盤となった今も、正木は6番を託され続けている。優勝争いという重圧の中で戦っているのだから、毎日が貴重な経験だ。村上隆行打撃コーチは「認められているから、あの打順でずっと使ってもらっているんでしょう」とキッパリ言った。スタメンで起用することが何よりも期待と信頼の証。「しかも近藤の後ろを打たせているのは、そういう存在になってきているんですよ」と代弁した。

 一方で、村上コーチは課題も強調する。「成長していますけど、まだ打てるところと打てないところがありますし、そこは厳しく伝えていると思いますよ。(弱点に)投げられた時に脆さが出るし、そこは長所と背中合わせです」と言う。正木の“負けん気”の強さは、首脳陣の1人としても感じ取っており、「結果を出していくしかない。まだまだ発展途上。ちょっとでも隙を作ったらすぐにボロボロになってしまうから、(小久保監督のコメントも)そういう気構えでいないといけないということだと思います」と頷いた。

 欠かせない存在になってきているとはいえ、絶対に隙を見せるなという指揮官なりのメッセージなのかもしれない。「まだまだだと思うので、認めてもらえるように。もっと活躍して頑張りたいと思います」と意気込む正木智也に、他の誰よりも期待をしているのが、小久保監督だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)