2試合11打席で得点圏は実に6度…あと1本が出ない正木
真のレギュラーをつかみ取るため、正木智也外野手が「生みの苦しみ」と戦っている。7日の西武戦(みずほPayPayドーム)。1点を追う9回1死一、二塁の好機でアブレイユの160キロツーシームにバットが空を切った。三振に倒れ、悔しさをにじませながら目線を宙に上げた24歳。チームはそのまま敗れ、今季最長の4連敗を喫した。
6、7日の西武との2試合は正木の力を試すかのように重要な場面が回ってきた。7日は5打席のうち3打席が得点圏での場面。3回2死一、二塁は見逃し三振。5回2死満塁でも空振り三振に倒れた。0-1で敗れた6日の同戦でも4打席のうち3打席が得点圏。2試合で計6度も好機で打席に立ちながら、いずれも結果は凡退。1本でも打てていれば、勝敗が変わったかもしれない展開だった。
西武バッテリーの狙いは明確だ。正木の前を打つ5番近藤健介外野手に対し、この2試合で与えた四球は実に6個。7日のゲームでは5回、9回と2度も申告敬遠で歩いた。球界随一のヒットメーカーとの勝負は避け、3年目の24歳を抑えればいい——。その目論見が的中している形だ。苦しみ抜いている正木の姿を近藤はどう感じているのか。
「ここまでずっと頑張っていましたし、そういう意味ではこういう(打てない)時期は必ず来ると思います。僕ももう1つのチャンス(7回2死一、二塁)で打てていたら、(正木も)もっと楽に(打席に)立てたと思いますし。そういうところはみんなでカバーしないとですよね」
もちろん敗戦の責任を正木1人に背負わせるわけにはいかない。相手が勝負を避ける中でも、近藤は数少ないチャンスをものにできなかった自分自身を責めた。それこそが主力としての責任だった。
今季は自己最多の60試合に出場し、ほとんどの数字でキャリアハイの結果を残すなど、大きく飛躍を遂げている正木。だからこそ突き当たる壁もある。データが積み重なるほど、相手チームの研究も進む。自らもその時期を乗り越え、球界屈指の打者に成長した近藤は正木の現状をこう分析した。
「自分で乗り越えないといけない壁だと思います。技術ももちろん大事ですけど、気持ちの持ち方だったり(も大事)。そういう場面をどんどん経験していけば、落ち着いて打席に立てるようになってくるのかな。正木なら乗り越えられると思っています」
今季の正木は、近藤のスイングを自身のバッティングに取り入れたことが飛躍につながった。その姿を「変化を恐れずにやっているところは素晴らしいと思います」と口にしたのは近藤だった。真摯に野球を取り組む24歳だからこそ、この試練を乗り越えられると信じている。
小久保裕紀監督も7日の試合後、正木に対して「これを乗り越えんと、本物のレギュラー、トッププレーヤーの仲間入りはできないですね」と、厳しくも温かいエールを送った。チームにとって、そして正木にとっても一番苦しい時期。プロの世界でさらに輝くためには、自らの力で打ち勝つしかない。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)