悔しい思いは胸の中に秘め、1軍を目指してきた。ソフトバンクの岩井俊介投手は3日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)に4番手として登板。この日も相手打線を3者凡退に打ち取り、危なげない投球を披露した。4月4日に1軍デビューを果たして以降、1人のランナーも許さない完全投球は5試合連続となった。
「ちょっとだけ。気になっちゃいます。シーズンが終わるまで続けられるのがベストですけど、そんなに甘くないので。でも、強い気持ちで向かうようにしています」と、23歳の右腕もパーフェクトの継続を意識はしている様子だ。
成績だけを見ると順調な1年目を過ごしているようにも見えるが、苦悩もあった。「もっと1軍にいられるかなと思ったんですけど……。無理だったので、2軍では(1軍)呼ばれるまでアピールし続けようと思って投げていました」。
ルーキーながら開幕1軍を掴むと、初登板後にはヒーローインタビューも受けた。しかし、すぐに登録を抹消された。7月に1日だけ1軍に合流はしたものの、8月30日に再昇格するまでの期間を2軍で過ごしてきた。
2軍では21試合に登板した。25回を投げて自責点は5。31奪三振、防御率1.80と、安定した結果を残してきた。「いつ呼ばれるんだろうみたいな感じで、結構いろんな人に言っていました。鍬原(拓也)さんとかには相談もしていました」。2軍では圧倒的な投球を披露しても、1軍の投手事情もあって“声”がかからない日々が続いた。
2軍にいる間に、同期入団の大山凌投手と澤柳亮太郎投手は1軍で初勝利を手にした。「いやもう悔しいっすね。悔しかったです」。同期の中で“初勝利一番乗り”を狙っていたのかを問うと、悔しそうな表情で黙って頷き、「クソっ」と一言。普段は明るい岩井も、同期の活躍には思わず本音がこぼれた。それでも悔しさは胸にしまい、ひたすらに腕を振ってきた。その思いは自身に新たな気づきをもたらした。
「バッターに気持ちで負けないようにしようって途中から思って。少し負けていた部分があったんですよね。負けていたというか、ちょっと思い切っていけない部分があったので、それをなくそうって思って。まだ1年目だし、チャンスはいっぱいあると思って、失敗してもいいやっていう感じで。そういう心構えに切り替えました」
再びつかんだ1軍のチャンスは、首脳陣の目にも確かな成長として映った。3日の試合後、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は、岩井について「計算が立ってきていますし、チャンスは増えると思っています」と語った。勝ちパターンの一角を狙える位置にまで成長してきたことを評価する。
「(1軍昇格は)やっと来たかっていう気持ちと、このまま継続してバッターに向かっていく気持ちを強く持って、今まで通り投げようかなとは思っています」と岩井。自身が目指すポジションに向け、一歩ずつ近づいていく。