前日17日には痛恨の失策…牧原大の“笑顔なき”今季1号ソロが決勝点に
会心の決勝弾を放ったヒーローの顔に笑みはなかった。18日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。両チーム無得点の5回1死、牧原大成内野手が初球の浮いたフォークを鋭く振りぬいた打球は右翼テラス席に突き刺さった。今季1号ソロに「とにかく積極的にいこうと思っていました」。ダイヤモンドを1周する際も、ほおを緩めることはなかった。
前日には屈辱を味わっていた。17日の同戦、同点の8回に相手先頭打者のなんでもない打球をファンブルし、出塁を許した。自らの失策からこの回に3点を奪われ、チームはそのまま敗れた。守備には誰よりも強い思いを持つ牧原大にとって、許しがたいプレーだった。
「昨日は僕のエラーで負けてしまったので……」。人一倍責任感の強い男は一夜明け、すぐさま行動で自らの覚悟を示した。試合前練習の開始前、午前8時半にはグラウンドに一番乗りで姿を現した。
まだ照明もついていない薄暗いみずほPayPayドーム。背番号8は黙々と体を動かした。「準備はいつも早いんで。そこは特に何かががあったからというわけではなかったですけど」。そう口にしつつ、「ただやり返したいという気持ちだけで練習から集中してやってました」と“リベンジ”の準備は万全だった。
プロ14年目とベテランの域に差し掛かっている牧原大だが、日々のアーリーワークにも顔を出し、若手らと混じって汗を流している。かつては本職の二塁だけでなく、遊撃や三塁に外野までこなすユーティリティとして自らの存在価値を高めた。「人より多くのポジションをこなすには、人より練習しないといけないのは当たり前なんで」とプライドをにじませていた。
そんな名手が今季は守備で苦しんでいる。48試合の出場でリ―グで6番目に多い7失策を記録。昨季は91試合で2個、2022年は120試合で7個という数字と比べても、失策の多さが目立つ。18日の試合前には本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチと念入りに話し込むなど、その姿からは必死さが伝わってきた。
牧原大の衰えぬ闘争心を口にしたのは村上隆行打撃コーチだった。「野球にミスはつきものなので、引きずっても仕方がない。前向きに頑張れればまたいい結果を出せるんで。失敗しても、すぐに取り返すのが大成らしさ。何より向かっていく顔がいいですよね。本当に頼りになる男ですよ」。
お立ち台では愛犬を抱きしめ笑顔も見せていたが、帰路に就く際は再び表情を引き締めていた。味わった悔しさを晴らすには、1試合の活躍だけでは足りないだろう。チームが4年ぶりのリーグ優勝、そして日本一を奪還するまで、まだまだ暴れ回る。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)