近藤健介が語る“3番・柳町達”の意味 2人で生まれる効果「外野のレベルが上がった」

ソフトバンク・近藤健介(左)と4号2ランを放った柳町達【写真:竹村岳、栗木一考】
ソフトバンク・近藤健介(左)と4号2ランを放った柳町達【写真:竹村岳、栗木一考】

現役時代に通算413本塁打の小久保監督…「成長を感じる」と言及した部分は

 誰が見ても進化は明らかだ。ソフトバンクは16日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)に4-0で勝利した。先発の有原航平投手が完封勝利を挙げる活躍を見せた中、打線で存在感を発揮したのが、初回に4号2ランを放った柳町達外野手だった。今季のチームで3人目となる3番打者の姿。「自ずと勝てるようになるんじゃないかと思います」と語ったのが、近藤健介外野手だ。柳町が3番に入ったことで生まれた、チームの“相乗効果”とは――。

 初回1死二塁のチャンスで回ってきた打席だった。左臀部の違和感によって欠場した栗原陵矢内野手の代わりに、この日も3番に座った柳町は、石川が投じたツーシームを捉える。打球は右中間テラスに一直線。「得点圏の佑京(周東)さんをホームに返そうと集中しました。結果的に最高の形になって良かったです」。貴重な先制2ランが決勝点となり、自身初の2試合連続のアーチがチームに勝ちを呼び込んだ。

 昨季を終えた時点での通算本塁打はわずか1本だった。昨秋から長打を増やすことをテーマとして掲げ、今季4号。明らかな変化を見せる柳町だが、成長ぶりは普段の打撃練習からも表れている。同じく長打力のアップに力を注ぎ、昨季26本塁打でタイトルを獲得した近藤が、柳町の変化について語った。

「いいバッティングをしていると思いますし、本人がやることだけに集中して、できている結果。練習でも打球のスピードが速いので、角度がつけばホームランになったり、長打になると思います。自分で挑戦というか、そういう姿勢は大事なんじゃないかと思います」

 この日の柳町のアーチは、打球速度171キロ。打撃練習中から常に、自分自身の打球速度をバロメーターとしている近藤が言うから説得力があった。開幕から5番に座り続け、山川穂高内野手ととも打線を牽引する近藤。3番・柳町の誕生で「外野手のレベルがまた上がった。チームですけど、競争の中でいいものを試合で出すことができれば、自ずとチームが勝てるようになるんじゃないかと思います」と、チームの底上げを実感しているという。

 そんな柳町自身も、近藤から大きな影響を受けている。右投げ左打ちの外野手というところも共通点で「試合終わりに一緒に打ったりするので、そこで聞いてみたり。バッティング練習でも本当に綺麗なスイングでホームランを打つので、すごいなと思いながら。自分もそこで見たものを試したりして、そういう存在です」と参考になることは非常に多い。日本を代表する打者から学ぶことで、取り組んできたことが結果になり始めている。

 小久保裕紀監督は現役時代、通算413本塁打。柳町の姿に「今、栗原がいない中で3番を打ってますけど、甘いボールを引っ張って、しっかり捉えられるっていうのは、彼の成長を感じますね」と目を細める。バットコントロールという最大の持ち味は誰もが認めるところ。「もちろんコンタクトがうまい選手なんですけど、やっぱり長打は自分で求めない限りは出てこないと思うんで、それを本人に求めながら、しかもバッティングを崩さずやってるっていうところに成長を感じますよね」。長打を増やすということがどれだけ難しいことなのかを理解しているから、柳町の成長が素直に嬉しかった。

 奈良原浩ヘッドコーチは「シーズン最初に2軍で。(状態は)良かったけど、なかなかチャンスがなかったっていうところで、辛抱してファームで取り組んだことが、結果的には今に繋がるのかなって。彼自身の中ですごく有効に、今結果として出ていると思う」と分析。その上で「ベンチとしても心強いし、期待大な選手ですよね。俺は期待通り」と、3番起用に応える柳町に惜しみない言葉を送った。穴ができてしまっても、すぐに誰かが埋める。送り出す首脳陣にとっても、こんなに頼もしいことはない。

 50試合の出場ながら、打率.316と高い数字を残している柳町。率と長打の“両立”を、誰よりもよく知る近藤は「(現状)維持は後退だと思っているので、僕自身も。そこは去年よりも新たなことに挑戦することはいいことだと思いますし、大事なことかなと思います」と話した。新たな挑戦を続ける姿と、周囲に与える影響。そんな姿を持つ若鷹が、次代のホークスを背負っていくかもしれない。

(飯田航平 / Kohei Iida)