甲斐も驚き…食事の翌日に「吉報」 飛行機飛び乗り、石塚綜一郎“予想外デビュー”の舞台裏

ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:小池義弘】
ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:小池義弘】

石塚はプロ初先発で3三振も冷静な自己分析「まだ余地があると思います」

 好投手相手に懸命に食らいついた。14日の西武戦(ベルーナドーム)で、プロ5年目にして初出場初先発を果たした石塚綜一郎捕手。2回2死三塁の第1打席は空振り三振。2、3打席目も得点圏に走者を置いた場面だったが、ともに空振り三振に倒れた。4打席目は走塁妨害で出塁したものの、デビュー戦は3打数ノーヒット3三振という結果に終わった。

 相手先発は、この日7勝目を挙げた3年目左腕・隅田知一郎投手だった。空振り三振に倒れた打席はいずれもフルカウントまで持っていく粘りを見せた。「欲が出ちゃったかなって感じです」と反省した23歳。小久保裕紀監督は「そんなに甘くはないですよ」と、ある程度“想定内”の結果に石塚をとがめることはなかった。

「自分に負けた感じというか、僕の弱点であるメンタルの部分が出てしまった」と冷静に分析した石塚。フルカウントからの3三振には「そこまではボール球を見極められていた」とした上で、「ヒットを欲しがってボール球を振ってしまった部分。そんなにタイミングを崩されたというわけではないので。そこはまだ余地があると思います」。悲観することなく、前を向いた。

 吉報が待っていたのは出場選手登録される前日の12日だった。「全くそんな感じもなかったので、本当にびっくりしました」。前日まで由宇での2軍戦に帯同しており、新たな背番号55が入った練習着はまだ洗濯が終わっていない状況で東京に向かう飛行機へ飛び乗った。ベルーナドームでの試合前練習はかつての背番号121が入った練習着で体を動かしていた。

ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:小池義弘】
ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:小池義弘】

「早かったねー!」。ベルーナドームで顔を合わせた甲斐拓也捕手も同じく驚きを隠せなかった。それもそのはず。石塚が1軍昇格を伝えられる前日11日の夜に食事をしていたからだ。

 昨オフの自主トレで初めて甲斐に「弟子入り」した石塚。同じく自主トレメンバーだった楽天の石原彪捕手も加わった食事は、「ただただ楽しく会話した感じで、ほとんど野球の話はしなかったですね」と世間話に花を咲かせた。まさか自分が翌日から“師匠”とともに1軍の舞台で戦えるとは、夢にも思っていなかった。

 自身と同じく育成入団から這い上がった甲斐からは、自主トレ中に「とにかく長所を伸ばしなさい」と力強く背中を押してもらっていた。7月24日に支配下選手登録を勝ち取ってから1か月もたたないうちに、恩返しする絶好の機会が訪れた。

「甲斐さんからは『2軍でもしっかり打っているんだから、こっちでも本当に頑張れよ』と言ってもらえて。しっかりと自分の力を出して、成長した姿を見せたいです」。デビュー戦はほろ苦い結果となったが、まだまだチャンスはある。師匠と同じく、1軍の舞台で輝いて見せる。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)