長谷川自身も1年目に左肘痛を経験…「気持ちはすごく分かる」
想定外のアクシデントでマウンドを降りた同学年の右腕の気持ちは、痛いほどよく分かった。「1球で『バンッ』ってなったような感じだったので。ちょっと(症状が)重いのかなと思いますし、本当に心配です」。思いを口にしたのは、長谷川威展投手だった。
10日の楽天戦(みずほPayPayドーム)。6点ビハインドの4回に2番手で登板したのはドラフト5位ルーキーの澤柳亮太郎投手だった。勢いづいた楽天打線を止められずに2点を失い、なお2死二塁の場面。阿部への初球を投げ終えた後、自ら異変を訴えた。トレーナーに寄り添われながらベンチに戻ると、首脳陣はすぐさま長谷川にスイッチした。
小久保裕紀監督は試合後、澤柳に対して「今、画像を撮りに行っているらしいんですけど、厳しいかなという感じです」と言及。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「当分投げられないんじゃないかなと思います」と表情を曇らせた。澤柳が抱いたであろう無念さを、長谷川はどう感じたのか。
「僕も怪我をしたことがあるので。本当に投げたくても投げられなくなってしまう……、その気持ちは凄くよく分かります」。長谷川自身も日本ハム時代の2022年、プロ1年目で左肘痛を経験。約3か月もの間、投球することができなかった。
澤柳の突然のアクシデントには「体も心も全然準備できていなかった」という。全力投球はブルペンで最後の2球、そしてマウンドでの投球練習の8球だけだったというが、澤柳の思いを考えればどうということはなかった。5回までの1回1/3イニングを無失点。難しい状況でも自身ができることをしっかりとこなした。
同学年の澤柳とともに、ここまでブルペンを支えてきた。長谷川が打たれた際には、慰めの言葉をかけられたこともあったという。「そういう時もあるよ、って。明るい感じで言ってくれて気持ちが楽になったこともあります」。
今回のアクシデントについては、軽々しく言葉をかけることはできない。「打たれた時のフォローよりも、やっぱり怪我した時っていうのは……。特にこの時期っていうのは、(復帰までに)長くかかるなら今年中に投げるのも難しいと思うので。メンタル的にはきついですよね」。右腕の無念をおもんぱかった。
「気持ちを背負って投げるとまでは言えないかもしれないですけど」。そう口にした長谷川はさらに続けた。「ちゃんと野球ができることの幸せさと、日々の練習から絶対に適当にはしないという思いは持たないといけないなと。澤柳の気持ちを少しもらって、投げられればと思います」。
長谷川の言葉選びは普段よりも慎重だった。それは、何よりも澤柳を心配しているからこそだ。リーグ戦は100試合を消化し、今季も残り43試合。同学年の右腕の思いを“少しもらって”、長谷川は左腕を振り続ける。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)