近藤健介「ただただ申し訳なかった」 初体験のスランプ…苦しんでいた“後遺症”

ソフトバンク・近藤健介【写真:竹村岳】
ソフトバンク・近藤健介【写真:竹村岳】

7月打率.200→8月打率.429、近藤健介の打撃が復活した意外な理由

 右手の痛みが消えたからこそ訪れた「苦しみ」と日々戦っていた天才打者が、再び上昇気流に乗り始めた。近藤健介外野手は8月に入って5試合で14打数6安打の打率.429、2本塁打をマーク。長かったトンネルから抜け出した。

 6日のロッテ戦(ZOZOマリン)。初回に2点を先制し、なお1死二塁の場面で小島の直球を左前にはじき返し、チームに3点目をもたらした。この日は2安打2四死球で4打席全て出塁。8月に入って出塁率.636と本来の姿を取り戻している。

 7月は全21試合に出場して打率2割、4打点で本塁打はゼロと、天才打者としては信じられない数字が残った。「ここまでのスランプはあまり経験したことがない」と自ら口にした近藤。日々グラウンドで見せる表情は変わらなかったが、主力としてのもどかしさが胸の内から消えることはなかった。

「ただただ申し訳ない気持ちだった。チームも状態が悪かったので、やっぱり責任は感じていましたね」。近藤の不振に比例する形で、チームも7月前半の11試合は3勝8敗と負けが込んだ。6月終わりには.355あった打率も、3割1分台まで落ち込んだ。その原因を村松有人打撃コーチはこう分析する。

ソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・近藤健介【写真:荒川祐史】

「右手の痛みから解放されてからのずれが修正できなかった」。6月12日のヤクルト戦、守備中に右手を痛め、しばらくは外野守備に就くこともできなかった。その影響を村松コーチは「相当ありました」と指摘する。

 右手を痛めた後も打撃は好調だったが、それは“痛みと付き合った打撃”ができていたからだという。「痛い時も打てていましたけど、(本来の状態に)戻ってからのバッティングにずれがあった。痛みがなくなったから大丈夫という単純な話ではなかったですね」。思わぬ「後遺症」と戦いながら、本来の形に戻ってきた。

 不振に苦しんでいた際も近藤はチームメートと笑顔で会話を交わすなど、普段の振る舞いは変わらなかった。そこには主力としての自覚があった。「落ち込んでいる姿とかを出さないっていうのは主力として大事だと思いますし、小久保監督もそういうところは気にされていると思うので」。

 試合に入れば、とにかく自らの打撃に向き合った。「日々結果を出そうとはしているんで。自分の結果が出るか出ないかいうのは試合に入ってみてから。そこに臨む姿勢は変わっていなかったかなと」。逃げることなく、正面から苦しみと向き合ったことで、本来の姿を取り戻すことができた。

 打撃の状態は再び上昇カーブを描きつつあるが、もちろん慢心はない。「これからも試合に出たら結果を出そうとすることは忘れずに。特にこの時期になると試合では結果を求めていくだけなので」。経験したことのない不調を乗り越えた男が、チームを頂上まで導いていく。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)