スチュワートは前半戦を終えて自己最多4勝、防御率2.09をマーク
来日6年目を迎えたソフトバンクのカーター・スチュワート・ジュニア投手がさらなる進化を遂げようとしている。前半戦を終えた今季はここまで11試合に登板し、早くも自己最多となる4勝をマーク。防御率2.09という数字を考えれば、もっと勝ち星が伸びてもよかった印象だ。
「昨年よりも成長できている手応えを感じているよ。特にコントロールの部分。以前よりもストライクゾーンで勝負できるようになってきたね」。本人の言葉通り、今季は9イニング当たりに与える四球数は「4.04」をマーク。一流どころと比べるとまだまだ高い数字だが、2023年の「4.89」、2021年の「7.99」と比較すれば、改善傾向にあることがわかる。
2018年にはブレーブスからドラフト1巡目、全体8位で指名を受けるなど、潜在能力の高さは折り紙付き。小久保裕紀監督からも「先発ローテの軸になりつつある」と大きな期待をかけられている。「日本で一番のピッチャーになることが目標」と語る右腕には、日本で出会った超えるべき存在がいる。
「山本選手と自分との差は『everything』。マウンド上での仕草から投げているボールまで、全てに歴然とした差を感じたよ。彼が日本で残した成績以上を目指しているし、そこは常に目標としているよ」
振り返ったのは来日3年目の2021年10月2日オリックス戦。先発として山本由伸投手(現ドジャース)と投げ合った試合だ。自身は初回に2安打4四球と崩れ、わずかアウト2つしか取れずに降板。一方、山本は9回2安打8奪三振の完封勝利を挙げた。スチュワートより1学年上の右腕との投げ合いはこの1試合のみだったが、今も脳裏に焼き付いているシーンだという。
強く意識する投手として、自身より2学年下の剛腕の名前も挙がった。「朗希ももちろん若くて、素晴らしい投手。未来が楽しみな選手だよね」。2022年には20歳5か月にして完全試合を達成した最速165キロ右腕、ロッテの佐々木朗希だ。スチュワートも最速160キロの真っすぐを武器とするパワータイプの投手なだけに、ライバル心は強い。
尊敬の念は、もちろんチームメートにも向いている。「和田(毅)さん、、有原(航平)さんが素晴らしい投手なのは間違いないし、その前なら千賀(滉大)さん。外国人投手なら(ニック・)マルティネスや(マット・)ムーアには色んなことを学ばせてもらったよ」。にこやかな表情ですらすらと言葉を口にした。
今年1月には球団と2年の契約延長を結んだ右腕。今年にかける思いはこれまで以上に強い。「後半戦に向けて夏場の暑さを乗り切れるように、高い意識を持ちながら体の管理をしていくだけだね」。理想の姿に近づくため、目の前の壁を一つずつ乗り越えていく。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)