楽天の中堅・辰己が見せた隙を逃さなかった栗原の“走塁意識”
チームが今季ワーストタイの3連敗を喫した中でも「凡事徹底」の姿勢が見えたのは、栗原陵矢内野手の走塁だった。6日の楽天戦(みずほPayPayドーム)は、相手投手陣に打線がわずか3安打に抑えられ、0-4で敗れた。3連敗が最長タイという事実が今季のホークスの独走ぶりを表しているが、敗戦の中にも強さの理由がわかるシーンがあった。
4点ビハインドの8回1死一、二塁。近藤健介外野手の打球は中堅手の定位置からやや深めに飛んだ。楽天の辰己がほぼ“棒立ち状態”で捕球すると、二塁走者の栗原はタッチアップを試みた。アウトカウントを間違えたのか、辰己は慌てて中継にボールを返したが、栗原は難なく三塁へ進んだ。
2死一、三塁となって代打の中村晃外野手が右翼へ鋭い打球を放ったものの、惜しくもアウトとなって得点を挙げることができなかった。そのまま9回も無得点に終わって零封負けを喫したが、相手のミスに付けこむ走塁を披露した栗原が一連の流れを解説してくれた。
「あそこは自分の中では普通のプレーでした」。そう前置きした上で、「(外野の頭を)越えないと思ったので“偽走”に入ろうとしたんですけど、相手の(ボールの)捕り方が『ん?』って感じだったので。そのまま(三塁に)行った感じです」
外野に飛球が上がった際にタッチアップの「振り」をするのは通常のプレーだが、栗原は辰己が捕球する直前に見せた異変に気付いた。「1点を返せば、まだわからない展開だったので」。“普通のプレー”と口にできるのは、日頃から高い走塁意識を持つからこそだ。
本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチも「あれは完全に相手のミスです」と強調しながらも「打球に対して後ろから入っていない時点で『もしかしたら』という予感ができたかどうか」と栗原の判断を評価。「ミスを見逃さないというのは大事なこと」とうなずいた。
ここ3試合の得点は「0」「1」「0」と、打線の状態が落ちてきているのは事実だ。小久保裕紀監督も「一気に全員が悪くなっているって感じなので。年間通してこんな時期はあるんですけど……」と言及。ここまで独走を続けてきたチームに訪れた苦しい時期。だからこそ、栗原が見せた「当たり前のプレー」には意味がある。
「このままズルズルいかないように。1つ勝てばまた変わってくると思うので。チーム全員で、ただ勝ちたいです」ここ2年は“あと1勝”に泣いたホークス。凡事徹底の意識こそが、1勝を拾うためには不可欠だ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)