痛恨の柳田離脱も…「フロントが望んでいる」変化、井口資仁氏が指名した27歳キーマン

ソフトバンク・柳田悠岐(左)と栗原陵矢【写真:小池義弘】
ソフトバンク・柳田悠岐(左)と栗原陵矢【写真:小池義弘】

育成から支配下返り咲きの元ドラ1佐藤直樹には「球団の期待度がうかがえます」

 ダイエー(現ソフトバンク)やメジャーで活躍し、ロッテの監督も務めた野球解説者の井口資仁氏によるホークス分析(不定期掲載)。今回のテーマは柳田悠岐外野手が離脱した影響について。チームにとって大きな痛手となったが、井口氏は今のソフトバンクだからこそ「チャンス」になりうると力説。はたして、その真意とは――。(文中の成績はいずれも交流戦終了時点のもの)

 5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)で、柳田は走塁中に右ハムストリングを痛めて途中交代。球団によると診断は「右半腱様筋損傷」で、全治4か月と発表され、今季中の復帰は微妙な状況となっている。開幕から不動の3番として、打率.293、4本塁打、35打点の成績を残していた“大黒柱”の離脱はあまりに大きく、痛い。

 井口氏は「柳田の代わりをできる選手はいない」と語ったうえで、その穴埋めを期待する選手として27歳の柳町達外野手、25歳の佐藤直樹外野手の名前を挙げた。

 2019年ドラフト1位の佐藤直は昨年オフに育成再契約を結んでいたが、柳田の離脱を受けて6月1日に急遽、支配下登録に復帰。同日に「1番・中堅」で先発出場するなど、6月は14試合のうち10試合に出場し、打率.273、2打点とまずまずの成績を残している。また、柳町も5月28日に今季初昇格すると、ここまで打率.351、9打点と好調をキープしている。

「柳町、佐藤直は期待されていると思います。特に佐藤直は支配下に復帰してすぐにスタメンで使われるあたりは、球団の期待度がうかがえます」

 チームは柳田以外にも主力の牧原大成内野手が4月30日に右内腹斜筋を損傷。その牧原大の離脱後に二塁のポジションを掴む活躍を見せるなど、1軍には欠かせない存在だった三森大貴内野手も右手人さし指を骨折。今月3日に右示指関節内骨折観血的手術を受けたばかりだ。怪我人が相次ぐ状況でも、ソフトバンクは41勝19敗2分けで、2位日本ハムに8.5ゲーム差をつけて首位を独走している。

「小久保監督も勝っているからこそ積極的に若手を使えます。これが競っていたらそうもいかない。若手は今年のホークスでこれほどチャンスがあると思っていなかったでしょうから。そういう意味では、こんな早い時期にこれほどのチャンスをもらえている。しっかりやっていかないといけない」

「食い込む若手が出てくるのをフロントも望んでいます」

 12球団屈指の戦力を誇る球団に生まれた、怪我人続出というまさかの“綻び”。若手にすれば、本来なら出場機会は途中出場やレギュラーの休養日、順位確定後のシーズン終盤が中心だったはず。長かったであろう“待ち時間”が、一気に短縮された形となった。

「食い込む若手が出てくるのをフロントも望んでいます」

 そのなかで井口氏が柳田離脱の穴を埋める存在として活躍を求めたのが、今季10年目を迎えた27歳の栗原陵矢内野手だった。3、4月は調子が上がらなかったものの、5月に打率.373、3本塁打、16打点をマークし、自身初の月間MVPを獲得。柳田の離脱後は全試合で3番に座っている。

「3番に入る栗原は実績もあるし、長打もある。4番を張っていた時期もあるわけですから。それだけ実力がある選手。少し怪我もしましたけど、しっかり1年間戦える選手です」。井口氏の期待も大きい。

 また、山川穂高内野手の加入で出場機会が減っていた中村晃外野手についても「出てくる可能性は増えるでしょう」と期待を寄せた。チームの危機を力に変える選手層があると、球団OBの井口氏は信じている。

(湯浅大 / Dai Yuasa)