忘れられない1日になった。ソフトバンクの廣瀨隆太内野手が14日の阪神戦(みずほPayPayドーム)でプロ初本塁打を放った。「狙ってなかったですけど、バッティング練習から調子が良くて、(打球が)飛んでいたので。今日はもしかしたら(本塁打が)あるかもなと思ってました」。試合前の練習から兆しを感じていたという。
この本塁打を見た山川穂高内野手は「僕の1年目に比べたらね。僕はこんなに試合に出ていないですし、すごいと思います」と、自身のルーキーイヤーと比較しつつ、廣瀨の打撃を称えた。
その上で「本当に1日1日必死で頑張っているっていうところだと思うんですけど……」と、廣瀨が置かれている現状に言及した。山川と廣瀨は試合前練習の打撃周りで同じグループ。通算230本塁打を誇るアーチストに極意を聞く絶好の機会にも思えるが、打撃に関する質問はまだしていないという。その理由を廣瀨に聞くと、山川の思考とのシンクロが浮き彫りになった。
「やっぱりまだ1軍に慣れてないので、『ピッチャーのこういう球に対して、こういう配球に対してどう立ってるんですか?』とか、そういう踏み込んだ質問はまだまだできない。まずは自分なりの考えで結果を残して、慣れてきたら色々聞いていきたいなと」
こう語ったのは廣瀨。自身も目指す“右の長距離砲”。目の前には最高のお手本がいる。それでもまだ質問をしていないのは、多くの課題が山積みだからだ。守備や走塁を含め、課題を1つ1つクリアした後に、初めて自分のスタイルが見えてくる。聞くのはそれからだと考えていた。
山川は廣瀨の気持ちを察するように「年齢を積み重ねていって、少し余裕が出た時に、自分はこういう風になっていくっていうのがもっと強く出てくる。その時に同じ右バッターとしてとか、そうじゃないとしても、なんかそういう会話になれば、こう思うよっていう話はすると思います」と、自身も経験した状況に身を置いているのではないかと語っていた。
「あれだけ確率よくホームランを打っている山川さんを見て、自分ももっと頑張んなきゃなっていう気持ちになるんですよね。このままじゃダメだなっていう気持ちで、今までよりももっと真剣にバッティング練習したり、もっと1球に集中しようとか、そういう気持ちになります」
打撃についての会話をすることはないが、山川の練習を見て学ぶことは多くある。2軍にいる間には見ることができなかった球界屈指のアーチストによる打撃練習。1軍のトップレベルの選手と同じ時間を過ごし、学んだものを吸収したことで、成長のスピードは早くなった。
「まだ今はガムシャラにやっているだけで、打席の中でこういうことを意識したりとかっていうよりは、なんとかボールに食らいついている感じなので。それが落ち着いてきて、こういう打球をもっと打ちたいなとか、そういう気持ちになってきたら、いずれ聞いていきたいと思います」
プロ初本塁打は、そんな廣瀨の普段の姿勢があったから生まれたのかもしれない。「もっと自分も頑張ろうと思うことができているのも1軍の良さかなと思います」。主力を怪我で欠く中で巡ってきた1軍の舞台。吸収できるものはすべて自分のものにし、定着を目指していく。