感じた小久保監督の「優しさ」 続いた2軍暮らし…嶺井博希が古巣で立った今季初打席

DeNA戦に出場したソフトバンク・嶺井博希【写真:小林靖】
DeNA戦に出場したソフトバンク・嶺井博希【写真:小林靖】

ヒット性の当たりが相手投手に直撃

 懐かしくも、嬉しい声援だった。ソフトバンクは7日、横浜スタジアムで行われたDeNA戦に10-1で勝利した。ホークスにとって敵地となるこの日の試合。8回に代打として向かった打席で、スタジアム中からの歓声を一身に浴びたのは、嶺井博希捕手だった。

 嶺井にとって、横浜スタジアムはたくさんの思い出が詰まった場所だ。2013年ドラフト3位でDeNAに入団し、2022年までの8年間を過ごした。1軍で472試合に出場し、プロとしての生き方を学んだ。2022年10月8日のクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦以来、608日ぶりに立ったハマスタでの打席は、嶺井にとって今季1軍初出場初打席。「違和感が……(笑)でも、声援も聞こえていたので、嬉しかったですね」と、笑顔で振り返った。

 この打席で、嶺井が放った打球によってアクシデントが起きた。相手の中川虎大投手が投じた2球目を振り抜くと、打球は中川の右太腿付近にノーバウンドで直撃。ボールは三塁方向に転がった。大和内野手が処理して嶺井はアウトとなったが、中川は治療のために一旦、ベンチに退いた。

「虎大もずっと(DeNA時代に)ファームで一緒にやってきた選手だったので、打ってやろうという気持ちは強かったんですけど、当たったからちょっと心配です」

 久々の打席で起こったまさかのアクシデント。「心配ですけど……。後で謝っておきます」。アウトになった悔しさを滲ませながらも、ともに切磋琢磨してきた元同僚を思いやった。こんな嶺井の人柄を知るからこそ、DeNAのファンからも多くの歓声が送られたのだろう。

今季初打席に立ったソフトバンク・嶺井博希【写真:小林靖】
今季初打席に立ったソフトバンク・嶺井博希【写真:小林靖】

 FAで移籍した嶺井は、今季がホークス2年目。昨季は1軍で44試合に出場したが、捕手2人制でスタートした今年は、開幕から2軍での生活が続いていた。なかなか1軍からお呼びがかからない状況でも黙々と準備し、試合や練習に取り組む姿が筑後にはあった。多くを語ることはないが、悔しさや募る思いはあったはずだ。

 そんな中で、かつての本拠地で迎えた今季の初出場初打席。9点リードという状況でもあり、嶺井は「(小久保監督の)優しさだと思います。その恩をしっかり結果で返したいと思います」と言う。配慮もあったのか、起用してくれた小久保監督への感謝の言葉も口にした。

「明日、明後日もチャンスがあれば頑張りたいと思います」

 4日に1軍昇格した嶺井にとって、今シーズンはまだ始まったばかり。「自分が出る試合で勝てばいい」。謙虚に語りつつもしっかりと前を見つめるその表情は明るかった。

(飯田航平 / Kohei Iida)