実績ある外国人投手でも特別扱いはしない――。首脳陣の揺るがぬ方針が表れた126球だった。17日の西武戦(みずほPayPayドーム)に先発したリバン・モイネロ投手は、7回1失点の力投で今季2勝目を挙げた。投球数はチームの投手陣で今季最多となる126球。6回を終えて5点リードと、展開的には交代してもいい状況だったにもかかわらず、続投した背景には首脳陣の「先を見据えた視点」があった。
6回を投げ終えた時点で球数は99球に達していた。スコアは5-0。「お役御免」の降板も考えられた中で、7回のマウンドにも上がった。1死から古賀に左中間テラス席へのソロを浴びると、続く佐藤龍には四球を与えた。この時点で球数は114球。タイムがかかり、マウンドに向かった倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)から掛けられた言葉を左腕は振り返った。
「自分の仕事がその回までだという認識(を伝えられたの)と、自分の力をすべて出してこの回までしっかり投げてくれという話だったよ」。1点を返されたとはいえ、リードは4点。ベンチは投手交代というカードを切るつもりはなかったことがうかがえる。疲れは見えたが、最後の力を振り絞って後続を2者連続三振。先発投手としての責任を全うし、リリーフ陣にバトンを渡した。
試合後、倉野コーチは7回続投の判断をこう説明した。「いろいろと話し合った上で、こちら(ベンチ)の判断です。(本人が)いけるっていうのもあったし、それを踏まえてなので」。モイネロの状態を把握したうえで、優先したのは先発投手としての“成長”だった。
「あそこを投げ切ることが先発としての役割だし、価値だと思う。シーズン終盤だったら、そりゃ代えます。でも今は、ああいう場面をいかに乗り越えさせるかが大事になる。『球がバラけてきたから交代しましょう』じゃ、成長がない。バテたところで乗り切るか、交代するかは大きく違うし、シーズンが進んだ先の結果も変わってくる。今はまだ、無難に(投手を)代えて抑えるっていう選択を取る時期じゃないと思っています」
シーズン序盤であること、そして首位を独走するチームの好調ぶりも相まって生まれた「余裕」があるからこそできる「我慢」ともいえる。倉野コーチは「助っ人としては、あまり見ていない。スチュワートもそう。もちろん日本人と外国人選手で価値観が違うので、全てを一緒にはできないけど、『外国人選手だから放置状態』みたいなことはしない」と、特別視しないことを強調した。
もちろん、一方的な“スパルタ教育”ではない。「一緒に学んで、成長していこうという姿勢はお互いにある。本人も『先発投手としては初心者だから、1試合1試合がすごく勉強になっているんだ』と言ってくれている。そういう謙虚な姿勢や学ぶ気持ちが成長に繋がっている」と信頼感を口にした。
チームとしての悲願である4年ぶりのリーグ優勝、そして日本一に向けて、順調に走り続けている小久保ホークス。「勝利こそが全て」のペナントレースでも、目先の1試合にとらわれない視点がある。末恐ろしささえ感じさせられた1試合だった。