オスナが再会を願った17年前のホストファミリー…瞬く間に記事は拡散され「皆さんに感謝」
まずは、拡散と発見にご協力いただいた方々、本当にありがとうございました。この場をお借りして、心から御礼を申し上げます。
チームメートの家族の協力があり、探していた人が見つかった。ソフトバンクのロベルト・オスナ投手が「会いたい」と願っていたのは、17年前に来日した際にお世話になったホストファミリー。「会って感謝を伝えたい」と筆者に記事化をお願いしたのが、7日の出来事。その日の夕方には当事者の発見にまでたどり着くことができた。明らかとなったのは、意外な協力者の存在。1本の電話で、全てが繋がった。
オスナは2007年に「第25回少年軟式野球世界大会」のメキシコ代表に選出され、初めて日本を訪れていた。宿泊していたのは、千葉県の御宿町。「本当に良くしてもらったんです。スーパーに連れて行ってもらったり、海にも行きました。この経験があるから、もう1回会えればと思いますし、そういうチャンスがあったら」と再会を熱望していた。確かな記憶と情報は、御宿町という地名だけ。それでも、SNSを中心に「見つけてあげよう」というファンの声は瞬く間に広がった。
「探している」という記事を公開したのが、7日の午前9時ごろ。そして筆者のスマートフォンが鳴ったのは、午後5時前だった。着信の主は、加藤和子広報課長。記事化を感謝してもらえたとともに「見つかりました」とご報告をいただいた。経緯を尋ねると、加藤課長が明かしたのが、近藤健介外野手の父、義男さんの協力があったことだった。
「記事を見た近藤さんのご両親が『探してあげたら?』と。昔、そこの近くに住んでいたそうでそういう縁もあるし『探したら見つかるんじゃない?』と(近藤選手の)お母さんが言ってくださったみたいです。それで当たって探したら、ヒットしたと聞きました」
千葉県で生まれ育った近藤。その両親の協力が、最大のきっかけになった。義男さんから加藤課長に電話をかけ「この記事の人なんだけど、あれだったら伝えられたら」と、発見の一報が耳に届いた。すぐにオスナのもとに報告に行くと「もちろん喜んでいました。もう泣きそうにもなっていて、その後にちょうど試合の準備でコンちゃんが通った時に『ありがとう!』って伝えていました」と舞台裏を語る。加藤課長自身も「思い出の人に会えて、それがまた(オスナ投手の)力になったら嬉しいです」と励みになる出来事だった。
明らかになったのは、御宿町だけではなく同じ千葉県内の大多喜町にも宿泊していたということ。甲冑を着ている写真は、大多喜町で撮影されたもので、実際には2組のホストファミリーにお世話になった。オスナにとっても「御宿は覚えているんですけど2個目のところに住んでいたっていう記憶はあんまりなくて。(甲冑を着ていたのも)自分は実際には御宿だと思っていました」と、記憶が上書きされた。最大のきっかけとなった近藤の父親にも「連絡をしてくださったというのは聞きました。本当に感謝しています」と深々と頭を下げる。
近藤とオスナ。あまり見慣れない2人かもしれないが、オスナは「仲は良いですよ」と頷く。2人は2023年からホークスの一員となった“同期入団”で「同じ1年目でいろんな話をしました。近藤さんは経験のある選手ですし、いつもコミュニケーションを取って、いい関係を築けていると思います」と語る。昨シーズンに近藤は本塁打、打点の2冠に輝いただけに、投手の目線で見ても「プレーする姿はすごいじゃないですか。球場の外でも食事をする機会がありますし、素敵な人、尊敬できる人です」と心からリスペクトするチームメートの1人だ。
今季から新たに4年契約を結んでいるオスナ。去就がまだ流動的だった時、残留を決めたきっかけに挙げていたのはホークスのチームメートの存在と、治安の良さも含めた日本に対する愛着だった。SNSでの拡散も含めて「アメリカでもメキシコでも、絶対にこんなことはない。日本人特有の優しさ、人を助けたいという気持ちがあったから見つかった。書いてくれた人、読んで拡散してくれた人、探してくれた人、皆さんに感謝しています」。日本の“温かさ”と、ファンの存在を改めて知る出来事になった。
「近藤さんのお父さんにももちろん感謝していますが、ファンの方々にも感謝しています。自分のホストファミリーが見つかったから、ではなくて、例えば自分たちがどこの町に行ってもファンは来てくれるし、応援してくれるし、僕たちのことを助けようとしてくれる。それって日本でしか起こらなくて、他の国だとどっちかというと野次だとか、厳しいことを言ってくることが多いんですけど、日本の方々は温かく見守ってくれますし、すごくスペシャルだと思います」
忘れていてもおかしくなかった感謝を、オスナは今も色濃く感じている。「もし会えたら特別な瞬間になると思います」。日本が大好きになるきっかけを与えてくれたホストファミリーの存在。心からの感謝を伝えるために、17年前の大切な出会いを抱きしめる。
(竹村岳 / Gaku Takemura)2024.05.12