3軍コーチに「もう帰ってきません」 2軍戦初出場初安打…重松凱人が追う三銃士の背中

ソフトバンク・重松凱人【写真:飯田航平】
ソフトバンク・重松凱人【写真:飯田航平】

喜びよりも反省が真っ先に「悔しい気持ちが残ったまま試合が終わってしまった」

 1軍の舞台で活躍する身近な先輩に一歩ずつ近づいていく。ソフトバンクの重松凱人外野手は4月30日のウエスタン・リーグ広島戦(タマスタ筑後)に「1番・左翼」で公式戦初出場を果たした。3軍からの参加という形での出場だったが、プロ初安打を記録するなど、2安打の活躍を見せた。

 戸畑高、亜大を経て、2022年育成ドラフト9位でホークスに入団。大学時代はリーグ通算1安打ながらも、長打力を買われてホークスの一員となった。そんな重松にとって待望の瞬間は、この日の第2打席で訪れた。初球を思い切りよく振り抜くと、痛烈な打球はレフトの前に転がる安打。続く第3打席でも内野安打を放ち、2軍デビュー戦を5打数2安打で終えた。

 それでも、一喜一憂することなく「初ヒットが出てからは、その後チャンスで三振したり、最後セカンドフライになってしまって、悔しい気持ちが残ったまま試合が終わってしまったので、明日はなんとかしたいっていう気持ちがあります」と、喜びよりも反省を口にした。その理由は、ルーキーイヤーの昨年から、同じ育成選手だった先輩たちの背中を見てきたからだった。

「緒方さん、川村さん、仲田さんも去年は一緒に3軍でプレーしたことがあって、そういう身近にいた選手が1軍で活躍しているのを見ると、自分も頑張らないといけないって思います。会話とかはしていないんですけど、テレビで姿を見るだけで自分の力になっているので、すごいなと思いつつ、絶対に負けないぞっていう気持ちを心に秘めて毎日やっています」

 育成から支配下となり、1軍の舞台で躍動する先輩たちの姿は、育成選手にとって手本にもなり、刺激にもなる。「仲田さんのように、自分も泥臭く積極的に野球を楽しみながら、なおかつ結果を出していきたいなと思っています」と、重松も大きな影響を受ける。そんな姿を見てきたからこそ、反省が先に出た。

 重松の持ち味は積極的に振りにいく打撃スタイルだ。「1打席目の初球を振れなかったことにすごく後悔が残っていて……。それからの打席は、何がなんでもファーストストライクから打ってやろうっていう気持ちでした」。緊張もあり、1打席目は空振り三振。それでも2本の安打を打てたのは、すぐに気持ちを切り替えて、初球から積極的に打ちにいくことができたから。松山秀明2軍監督も「ボールに食らいついていく姿とかを見てると、期待してしまう」とその姿勢を称えていた。

 初安打のボールは重松の手に渡ったが、「嬉しいですけど、1軍で打ったボールが手元に帰ってくればいいなと思いながら……」と、浮かれることなくボールを受け取った。自分が目指すものは2桁の背番号であり、1軍の舞台であることをどんな時も忘れることはない。

「どのピッチャーが来ても、背番号が3桁である以上は結果を残さないと2桁にはならないし、2桁にならないと1軍の舞台でプレーすることはできないので。誰と対戦というよりは、投げてきたピッチャー全員を打ち返すっていう気持ちで毎日取り組んでいきたいです」
 
 予定では2軍への参加はこの日と5月1日だけとなっている。「3軍のコーチには『もう帰ってきません』って言ったんで、それぐらい結果出せるように頑張りたいと思います」。そう語るように今後の結果次第では参加ではなく、昇格になるかもしれない。そのためにも先輩たちのように、泥臭くボールに食らいついていく。

(飯田航平 / Kohei Iida)