山川穂高から「やめておけ」 止められた“禁じ手”…リチャードが好調を維持する要因

ソフトバンクのリチャード【写真:飯田航平】
ソフトバンクのリチャード【写真:飯田航平】

結果を求めるための大胆な変更も…「吉と出るか凶と出るか」

 変化を求めて試行錯誤の日々が続いている。ソフトバンクの2軍は13日、タマスタ筑後で行われた春季教育リーグの阪神戦に0-8で敗れた。4安打と抑え込まれたが、4番に座ったリチャード内野手は12日の本塁打に続き、この日も安打を放って結果を出した。

 今季は、打撃の“師匠”でもある山川穂高内野手がFAでホークスに加入。宮崎キャンプ中には全体練習後の自主練習や休日返上で一緒に練習を行い、様々な考えや打撃理論を聞き、実際に取り組んできた。その成果が結果として表れ始めている中、リチャードはさらなる可能性を求めて新たな“変化”を取り入れている。

「バットを920グラムで、めっちゃ重たくしたので」

 これまでは890グラム前後のバットを使っていたリチャードは、30グラムも重たい920グラムのバットに変更した。「バットを渡したみんなから『あ、オレ無理だ』みたいなことは言われますね」。周囲は使いこなすのが難しいと感じるほどの重さのバット。リチャードにとっても大胆な決断だった。

 真似をしたいわけではなかったというが、920グラムは山川が使うバットと同じ重さ。「『やめとけ』とは言われました。『お前は(重いバットを)使わなくても飛ぶやん』みたいな、そんな感じだったと思います」。バットを重くすることを相談するも、こう反対された。890グラム前後のバットでも並外れた飛距離を出すことができるリチャードが、わざわざ扱うことが難しい、重いバットに変える必要はない、というのが山川の考えだった。

 それでも重いバットを使い始めたのは、リチャードなりの考えがあってのこと。「軽いバットで打っていると振り回せてしまうので。どうしても僕は振り回す癖があるので、自分が思っているよりバットが出てくる。操作できすぎて出る、みたいな。そういうのがなくなってくれるといいなっていうのもあります」。自身の癖を少しでも改善し、1軍で結果を残すために必要だと考えたことを、2軍にいる今のうちに試しておきたいからだという。

リチャードが使っているバット【写真:飯田航平】
リチャードが使っているバット【写真:飯田航平】

 何度も1軍で壁にぶち当たってきたからこそ、何かを変えないといけないという思いが強い。「920グラムで行って、吉と出るか凶と出るかって感じです」。バットを変えても結果は出ているが、まだまだ手応えを感じてはいない。

「わからないですね。昨日から920(グラムを)使っているのでわからなくなりました。それまでは全然悪くなくて、いつでも1軍に呼ばれてもいいって感じだったんですけど、昨日からまた冒険に出ているんで、正直どうなんだろうっていう感じです」。どこか、もどかしそうな表情でこう話す。変化を求めて行動を起こすも、それが正しい判断なのかは、まだわからない。

 道具については自分の感覚と意思を重んじるリチャードだが、気持ちの持ち方と考え方については山川からの教えが確実に実になっている。「選ぶではないですけど、打たないといけないので、どうしても(甘い球を)待ってしまって、追い込まれて、最後は振らされて三振みたいなことがめちゃくちゃあった」。1軍に呼ばれても結果を残すことができなかった要因を、こう分析する。山川からの助言が、課題の克服に繋がっている。

「1番はとにかく振ることです。振る回数が多ければ当たる回数も多いでしょ、という考え方なので、山川さんは。0回だったら、もちろん当たらない。チャレンジしていないので。3球チャレンジすれば確率も上がるでしょと。キャンプの時はゲッツーを打っても、次の打席で初球からホームラン打ったりとか、体現していたので。『そういうことか』っていうのはわかりやすかったです」

 キャンプの中盤に「行けると思ったら行け」とのアドバイスをもらい、今はその教えを持って打席に入ることができている。「僕が振った時はいけると思った球なんだなって思っていただければ」。昨季までとは違い、気持ちの面での変化がある。さらなる段階のため、次に目を向けた課題が技術であり、技術を高めるためにバットを変更した。

 打席に入る姿勢と考えはイメージ通りの動きができるようになってきている。あとは自身の感覚を信じて採用した、重いバットで結果を残し続けるだけだ。

(飯田航平 / Kohei Iida)