ソフトバンクは12日、巨人とのオープン戦(平和リース)に3-2で勝利した。「4番・一塁」で出場した山川穂高内野手は、初回2死二塁で先制の適時打を放った。5回の守備でこの日はお役御免となったが、2打数1安打1打点と結果を残し続けている。
ここまでオープン戦は7試合を消化。5勝1敗1分けで首位に立つホークスの中でも、山川は打率.385、2本塁打、5打点の好成績を残している。17試合の出場に止まった昨季のブランクを感じさせない打撃を見せている。
単に好調なだけではない。山川には常に行っている周到な準備がある。「自分の立ち姿や景色とか、そういうのも含めてのボールの見え方というよりも、景色の見え方、全部ですね。そこが良くなれば打てると思っています」。豪快な打撃とは対照的に、山川のバッティングは繊細だ。
1年近いブランクを感じさせない打撃は、オープン戦前の宮崎キャンプから続いている。「疲れすぎている時に打ち込むと疲れたスイングになってしまう」と、疲労度を考慮しつつ、試合内容の良し悪しに関係なく試合後にも練習を行うようにしている。そこで確認するのは“姿勢”だという。
「ちょっと専門的な話ですけど、立っているっていうのは地面の力をもらわなきゃいけない。力をもらう時にどの足のポジションなのか、見えてはいないですけど、踵で立つのか、つま先気味で立つのか、本当にこれだけでも景色が変わってくるんです。細かくなりますけど、どこに(重心を置いて)立ったら自分の力が1番下に伝わるのかっていうのは常に確認しとかなきゃいけないなとは思っています」
踵体重か、つま先体重か。実際に記者の前で表現してみた山川の頭の動きは、前後10センチほどの違いでしかなかった。ただ、その数センチの差が、見える景色を変え、ミートポイントのズレに繋がる。だからこそ、姿勢を整える必要がある。
どこに重心があれば、自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるのかを理解しているからこそ、時間をかけてでも、日々、確認を行う必要があるという。本塁打を放った5日のヤクルト戦(PayPayドーム)の打席でも「下に入る力がどうか」を意識していたという。
バットを変えないことも山川流だ。「920グラムですね、僕は。5グラム軽くしてみたり、10グラム軽くしてみたりとか、ちょっと試みることもあったんですけど、大体失敗してきた。バットは長さも重さも変えずにやった方が、自分の状態もよくわかるので、今日振れてるなとか振れていないなとかも含めて」。同じバットを使い続けるからこそコンディションを敏感に察知し、状態に合わせた調整を行うことができる。
「大事にしたいのは、試合での結果ももちろんなんですけど、それよりも準備の部分になるので。何時に球場に来て、何時からトレーニングを始めて、何時にグラウンドに出てとか、そういうところも含めて結構僕はキッチリやるタイプだと思う。そういう試合前のルーティンと、試合が終わった後のルーティンを大事にしていけば、安定した状態で試合に臨めると思うので、そこを1番大事にしています」
3度の本塁打王を獲得した山川だからこその、経験にも裏打ちされた準備。「感覚の上で出来たかどうかっていうところよりは、ちょっと理論の上でやっておいた方が、シーズンが始まってからの引き出しになるのかなとは思う」。まもなく始まるペナントレース。安定した成績を残し続けるために姿勢と見える景色を常に整えていく。