初のキャンプで痛感「僕なんて甘かった」 ドラ2岩井俊介が感銘受けた育成右腕の姿勢

ソフトバンク・岩井俊介【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・岩井俊介【写真:藤浦一都】

13日に行われた投手会では和田の隣に着席も「何も話せなかった」

 能力の片鱗を示した。17日に生目第二球場で行われたセガサミーとのB組練習試合。ソフトバンクの4番手として6回にマウンドに上がったのはドラフト2位ルーキーの岩井俊介投手だった。社会人の打者相手に1人の走者も出さず、1イニングを3者凡退に封じ、上々の“デビュー戦”となった。

 先頭打者を三ゴロに打ち取ると、後続も二ゴロ、三飛と打ち取り、わずか6球で3者凡退に打ち取った。「ストライクゾーンにボールがいっていたのは納得ですけど、自分的にはまだ噛み合っていないというか、ボールの強さ、力の伝わり方というのは納得いっていないです」とは言うものの、最速で150キロをマーク。最大の武器というスラーブも決まり、十分にアピールになった。

 名城大からドラフト2位で入団。即戦力投手として大きな期待をされている中で、キャンプでは毎日、刺激的な日々を送っている。大きな影響を受ける人物の1人が、巨人から戦力外通告を受け、育成選手としてホークスに入団してきた鍬原拓也投手だ。

 2017年ドラフト1位で中大から巨人に入団した鍬原は、2022年に中継ぎとして49試合に登板して3勝2敗13ホールドをマークした。昨季は5試合の登板に終わり、オフに戦力外となった。新天地のホークスでの春季キャンプでは岩井と同じB組に。連日、チーム本隊よりも早く球場に入り、黙々と体を動かして練習に備える姿が印象的だ。

 その姿を見て「まだまだ僕なんて甘かったです」と口にするのが岩井だ。「鍬原さんがすごいです。トレーニングのこともめちゃくちゃ考えていて、アーリーワークではちゃんと足首から徐々に上半身に向かってほぐしていく。練習を一緒にやっていても『ここを意識してる』とか細かく教えてくれます。本当にタメになります」。プロで経験を積んだ投手の取り組み、姿勢を目の当たりにして、改めて意識を強く持つようになった。

 オフ前日だった13日の夜には投手陣全員が集まる「投手会」が宮崎市内の焼肉店で行われた。岩井は和田毅投手、有原航平投手、リバン・モイネロ投手と同じテーブルに着き、チーム最年長の和田が隣に座った。明るいキャラクターで早くもB組のムードメーカーにもなっている岩井だが、この時ばかりは錚々たる顔ぶれに「何も話せなかったですし、何もできなかった」と苦笑いだ。

「和田さんが真横にいらして『どんどん食べて』って言ってくださったんですけど……。もしかしたら和田さんが“育てている”肉かもしれない、と思ったら、全然食べられませんでした」。あまりの緊張で何を話したかも覚えていない。先輩3人の会話を必死に聞いていたという。

 堂々とした姿と、対照的な初々しさの両面を見せている岩井。このままアピールが続けば、A組参加の“お声”がかかってもおかしくはない。将来が楽しみな投手の1人だ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)