柳田悠岐の「人が変わる」瞬間 笑顔から一変…裏方だから知る打撃への執念「全くの別人」

自主トレを公開したソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】
自主トレを公開したソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】

浜涯泰司打撃投手が明かす今オフの自主トレ…少数精鋭に「絶対こっちの方がいい」

 明るくて、大きな器で後輩を引っ張る。そんなギータが、ギラっと目つきを変える瞬間がある。打撃投手だけが知る一面だ。「早すぎんじゃねえかってくらい仕上がってる」。そう語るのがここ数年、柳田悠岐外野手の“専属”として腕を振ってきた浜涯泰司打撃投手だ。着実に、頼もしすぎるほどにステップを踏む中で、仕上がりの早さの要因は「少数精鋭」にあるという。

 柳田は18日、大分・佐伯市内で自主トレを公開した。佐伯市での自主トレは2年連続で、今月6日からスタート。公開日はランメニューの後、守備練習。最後のフリー打撃では柵越えを連発し、力強い打球を見せ続けていた。自身の状態について柳田は「ちょっとだけ太ってるんですけどね、若干。でも大丈夫です、範囲内なので」とギータらしい笑顔で語る。状態に対する充実感は、表情にも表れていた。

 数年前から自主トレにも同行するようになった浜涯打撃投手は「たまたま練習中に『浜涯さん、誰か一緒に自主トレ行ってるんすか?』って聞かれて。行っていないと言ったら『じゃあ来てくださいよ』って」と経緯を語る。“早すぎる”と表現するほどの柳田の状態からは「(気合は)感じるね。年々、感じる」と、熱い思いを受け取っている。なぜ今の柳田は、順調に調整を重ねられているのか。浜涯打撃投手は「少数精鋭」が理由と語る。

「これくらいの人数の方がいい気がする。ギータもみっちり打っているし、打っている時間とか本数的には今年の方が多い。人数が少ないと回りも早いから。去年とか、多かったらなかなか(打撃練習でも)順番が回ってこない。だからギータも『4人いいな』『これくらいがマジいいっすね』って言っていたし『来年も4人にしよう』って言ってたよ。“早いもん勝ち”になるんじゃない?」

 当初は6人での予定だったが、笹川吉康外野手も生海外野手も現在リハビリ組で調整しており、結果的に4人となった。DeNAの梶原昂希外野手に、チームメートからは佐藤直樹外野手とイヒネ・イツア内野手が参加。打撃練習も、人数が多ければ自然と“待ち”の時間が生まれてしまう。少ない人数で行っているからこそ本数も増えて、練習の時間も短くて済む。これまでは来るものを拒まないようなスタンスだったが「4人を上限にしよう」とも話しているそうだ。

 2023年の自主トレ公開の日には日本ハムの清宮幸太郎内野手や、阪神の佐藤輝明内野手らが参加。公開日は9人の選手が集結していた。浜涯打撃投手も「去年は初日から1時間くらい投げた。だから『もう近くから軽く投げるね』って。そうじゃないと、長い時間も投げられないから」と振り返る。投げる方は人数が多ければ球数も増えるが、打つ方は順番がなかなか回ってこなくて、打ち足りないようなスパイラルとなる。サポートする浜涯打撃投手にとっても「絶対こっち(人数が少ない)の方がいい」とキッパリ言い切っていた。

ソフトバンク・浜涯泰司打撃投手【写真:竹村岳】
ソフトバンク・浜涯泰司打撃投手【写真:竹村岳】

 シーズン中の打撃回りでも、浜涯打撃投手は柳田の時に必ず投げる。裏方さんの中でも、柳田とかなり距離の近い1人だ。「あのまんま。インタビューの時とかと何も変わらない」と人柄を表現するが、そんな柳田が“豹変”する瞬間がある。L字のネットを挟み、相対する打撃投手だから知っている一面だ。

「グラウンドに出たら、特にバッティング練習になったら全然違うよ。普段、裏で話していたりとかランニング中にしゃべっているギータと、バッティングのケージの中に入ってきた時のギータは全然違う。目つきもやっぱり違うし、全くの別人になる。練習でもこれだけ違うんやから、試合になったらもっとすごいと思うよ」

 誰もが柳田に対して明るくて、飾らないという印象を持っているだろう。浜涯打撃投手も「普段はちゃらんぽらんにしているかもしれないけど」と、親しみやすい兄貴肌な一面も当然知っている。だからこそ、打撃練習になった時の柳田は「全く違うよ。集中しているなってすごく感じる。バッティング練習になったら人が変わる」とキッパリ証言した。「集中力」とは、柳田がシーズン中から数多く発する言葉ではあるが、打撃投手として相対することで直に感じ取っている。オンオフの切り替えも、柳田の凄みの1つだ。

 自主トレ期間の今、球場近辺のホテルで寝食をともにしており「ギータが温泉があった方がいいって言って」と、柳田のこだわりは温泉の有無だそうだ。4年ぶりのリーグ優勝を目指す2024年。浜涯打撃投手も「とにかく怪我だけせんといてくれたら。それだけが心配」と、ファンと同じような願いを抱いていた。柳田の打棒と笑顔が、今季もチームの中心だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)