ホークスOBの父から継承…寮に持ち込んだグラブに込められた思い 育成5位・星野恒太朗の決意

ソフトバンク・星野恒太朗(右)と父親の星野順治さん【写真:飯田航平】
ソフトバンク・星野恒太朗(右)と父親の星野順治さん【写真:飯田航平】

父のグラブ持ち込みは這い上がるための“意思表示”

 まさに文字通りの“親子鷹”だ。ソフトバンクの育成ドラフト5巡目・星野恒太朗投手(駒大)の父は、ホークスOBで投手コーディネーターを務める順治さん。父の背中を追ってホークスに入団した息子が入寮した際に持参したのは、父の現役時代に使っていたグラブだった。「父のグラブはずっと持っていて、ずっと近くに置いていたので部屋に飾ろうかなと思います」と、持ち込んだ物の中で1番の“宝物”であると明かした。

「小学生の時にはもう持っていたんで、もっと小さい頃から持っていたと思う」

 幼少期から高校までは実家の部屋に飾り続け、駒大の寮の部屋にも持ち込むほど、大事にしてきた。「小さい頃はただのグラブだと思っていたんですけど、父と同じユニホームを着てやるということで、すごく重みを感じるようになりました」。渡された当時と今とでは感じる重みが違っている。

 父から継承したグラブには「プロに行けるようにという思いが込められてたんじゃないかなと勝手に思っています」と語った星野。若鷹寮にまで持ち込んだのは、まだ自分はプロ野球選手になったわけではない、という気持ちの表れなのかもしれない。

“育成のホークス”と言われるが、オフの契約更改交渉では、複数の選手から育成選手に対する厳しい意見も飛び出した。その中には“育成はプロではない”との声も……。もちろん、そのどれもが、ホークスを強いチームにしたい気持ちがあるからこその意見だ。待ち侘びていたという入寮の日は、順治さんと共にファンへのサインにも応じたが、「まだあまり(プロの)実感はない」というのも本音だろう。

 年末には長崎県の雲仙に家族旅行に出かけたが、練習できない環境に対して身体が反応した。「運動ができなくて、ストレスが溜まって体調を崩してしまって……。すぐに福岡に戻って運動したら体調が回復したので、練習しないとストレスが溜まって嫌なんで、旅行はキツかったです」。家族との時間も頭と身体は野球のことでいっぱいだった。

 新人合同自主トレも始まり、星野の1年目がスタートした。背番号は「133」。入寮の際に順治さんからは「いよいよだな。怪我には気をつけて頑張れ」と言葉をかけられた。福岡のファンに愛された父のように、育成から這い上がってPayPayドームのマウンドで快投を演じる日が来ることを楽しみにしたい。

(飯田航平 / Kohei Iida)