周東佑京が語る世代交代の必要性…選手会長就任は「年齢が年齢」 27歳で芽生える自覚

ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】

20日の契約交渉で500万アップでサイン…球団との交渉で訴えた思い「強く」

 自分自身が目指していきたい、選手会長としての形が少しずつ見えてきた。ソフトバンクの周東佑京内野手が20日、PayPayドームで契約更改交渉に臨んだ。500万円アップの4500万円(金額は推定)でサイン。「小久保(裕紀)監督が1年目、僕自身も選手会長は初めてなので、これまで以上に周りを見てしっかりとできたらなと思います」と選手会長としての誓い、新監督を支えることを約束する。もう自分たちの世代が背負っていかないといけないことを、誰よりも理解しているからだ。

 6年目の今季は114試合に出場して打率.241、2本塁打、17打点、36盗塁で3年ぶり2度目の盗塁王を獲得した。500万アップという評価も「打席数が足りていないですし、前半もあんな感じだったので。妥当かなと思います」と受け止めている。小久保裕紀監督が掲げる「美しさ」。選手会長としても「私生活のこともそうですけど、最低限できることはやろうとキャンプでもおっしゃっていたので、野球選手としても人としても当たり前のことをするのが大事かなと」と呼応するつもりだ。

 選手会長の就任が発表されたのは、11月26日。ファン感謝祭「鷹奉祭」のオープニングセレモニーだった。12月に入り、2週間の渡米。みっちりトレーニングを積んで、日本に帰ってきた。技術向上はもちろん、自分自身と向き合って考える時間もたくさんあった。新しいチームリーダーとしての形が、自分なりに少しずつ見えてきた。周東が掲げるのは「周りを見ること」だという。

「自分に集中しないといけない時間は確実にあると思いますけど、僕は自分に集中しすぎて、自分よがりになりすぎちゃうので。周りを見るくらいがちょうどいいのかなと思います、僕の場合は」

 選手会長やキャプテン、新しい肩書きを背負っても「まずは自分のことを」とコメントする選手は少なくない。自ら「周りを見る」と言う選手の方がハッキリ言って珍しいが、周東なりの自己分析の結果だった。中村晃外野手、今宮健太内野手ら前任の選手会長を振り返っても周東は「周りが見えている中で自分のことをしっかりとする方々だったので。僕は周りをしっかり見ておかないと、自分だけになってしまう。そこに気をつけたいです」と背筋を伸ばす。先輩たちとは違う。自分だけのリーダーシップで、チームを引っ張っていくつもりだ。

 選手会長となって、まだこれといった仕事はない。その中で“初仕事”は、11月27日の球団納会だった。締めの挨拶を、就任したばかりの周東が務めた。「挨拶はしましたけど、普通にしゃべって終わっただけでした」と謙遜するが、又吉克樹投手いわく「『もうそろそろ、このオフシーズンに優勝できなくてすみませんというのはやめましょう』と言っていました」というのだから頼もしい。力強い決意表明は、もうすでに済ませてある。

 契約更改交渉の席で言葉を交わした三笠杉彦GMも、気合は感じ取っている。球団ではなく、完全に選手会が主導して受け継がれる選手会長の座。やり取りの一部を踏まえ、周東の言葉から伝わってきたものをこう語る。

「今宮選手会長から何学年か下で、あえて周東くんが選手会長だと。そのことに関して、周東くんも思うところがあるというか、自分がやっていかないといけないということだと思います。中長期的にホークスがまた、強いチームになるために周東くんの世代、その下の世代がチーム全体を強くしていきたいと思って、自分のトレーニングをしながらもチームのことを見ているというようなことは、必要なんじゃないかと。ご本人もそういう気持ちでいると感じました」

 来年2月には28歳となる。柳田悠岐外野手が来年には36歳になることを考えても、もう自分たちの世代であることは誰よりもわかっている。「自覚というよりも年齢が年齢ですし、下の子たちも増えている中で、上の選手も多いですけど、そろそろ僕らの世代がしっかりとして上の選手にも下の選手にも自由にやってもらいたい気持ちがあります」。人懐っこく愛され、グラウンドでは周りを見ながら自覚を胸にプレーする。周東だけのスタイルに、きっと選手たちもついてきてくれる。

 契約更改後の会見で、理想の選手会長像について問われた。「理想ですか? 優勝できる選手会長になりたいです」。2年連続での盗塁王への思いについても「僕はタイトルというよりも優勝するためにどうできるかというのを考えたいと思います」とキッパリだ。立場が人を変える。肩書きを背負い始めた周東佑京の言葉は、自覚と覚悟が芽生えていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)