今オフにホークスから戦力外通告を受けた2016年ドラフト1位の高橋純平投手は、来季から球団職員として働く。現役生活に幕を下ろす決断を下した今、何を思うのか。インタビューに応じ、声援を送ってくれたホークスファンへの感謝、現在の心中を語った。
「僕はホークスを応援してくれているファンの皆さんが大好きでした。野球選手としては短い方ですけど、この8年間、ファンの方々がいたからこそ、ここまで続けて来られたと思っていますし、すごく感謝しています。何もお礼も言えていないので、この場を借りて『ありがとうございました』と伝えたいです」
2016年のドラフト1位で県岐阜商からホークスに入団した。高校ナンバーワン投手で3球団競合の上でのプロ入りとあって、ファンの期待は大きかった。キャンプ地の宮崎やファーム本拠地であるタマスタ筑後でもたくさんの声援を受けた。そして、もともと、高橋純はそうしたファンとコミュニケーションをとるのが好きだった。
「ファンの人と話すのが大好きでしたし、そういうファンの人との交流があったからここまでやって来られました。プエルトリコのウインタリーグに行ったときに、現地で選手とコーチ、選手とファンがお互いをすごくリスペクトし合っているのを見て、リスペクトの大事さを改めて学びましたし、それからはファンの方に対してもっとリスペクトの気持ちを持って接しようとしていました」
2019年には1軍で45試合に登板して頭角を表した。だが、翌2020年には右肩と右肘の故障で離脱。その後は怪我で苦しむ時期が続き、制球難に陥るなど、ピッチングも崩れていった。自身のプライベートのことで、世間を騒がすこともあった。事実と異なる部分も多々あった。釈明しようとも考えたが、それはしなかった。SNSなどで誹謗中傷を浴びた。以降、周囲とは距離をとるようになった。チームメート、球団スタッフ、そして、ファンの方々に対しても、だ。
「自分が悪いんですけど、どうしても人間不信のような状態になってしまって、チームメートに対しても、ファンの方々に対しても、愛想悪くというか、壁を作って接してしまっていました。そんな態度を取ってしまっていたことに対して『ごめんなさい』と言いたいですし、本当に申し訳なく思っています。そんな態度のまま戦力外になって、引退を決断して、まだ何もお礼を言えていないのが心残りです」
少なからず、そうした思いが決断にも影響したのは否めない。「野球は大好きですけど、泥臭く野球を続けるには目標が必要になってくる。それってやっぱりNPBに復帰する以外にないですよね。ただ、NPBでもう一度、野球をやることに対して以前と同じ熱量でいられなくなっていて、仕事として野球を続けるというのはちょっと違うかなって思ってしまったんです」。中途半端な感情で選手を続けるわけにはいかない。だからこそ第一線から身を退くことに決めた。
苦悩の時間が多かった8年間の現役時代で最高の瞬間は2019年に日本一に輝いた時だという。「あれ以上に興奮することはないと思います。あの瞬間にのみ、プロ野球選手って報われるんだなって思いましたし、あれ以上に幸せな時間ってないでしょうね」。多くの苦しみ、少しの喜びを味わった8年間。高橋純平はファンへの感謝を胸に第二の人生を歩み始める。