目を輝かせ、満面の笑顔を浮かべていた。7日に来季の契約更改を終えた尾形崇斗投手である。シーズンオフに入ってから“24時間野球漬け”の日々を送っており、その日々が非常に充実しているという。
今季は1軍で0勝1敗、防御率4.00の成績だったが、12試合登板はプロ6年目でキャリアハイだった。3度の昇格と降格を繰り返した一方で、小久保裕紀監督が率いた2軍では守護神を任された。41試合に登板して2勝1敗16セーブ、防御率0.98の好成績を残し、ウエスタン・リーグの最多セーブのタイトルも獲得した。
来季の1軍定着、そして勝ちパターン入りを目指し、このオフは体だけでなく、頭のトレーニングにも取り組み始めた。早朝6時から練習を開始し、ロベルト・オスナ投手から学んだトレーニングなどで肉体の強化に励む。午後からは机に向かい、パソコンを開いて「来年対戦する1軍のバッターのテータを1人1人、頭に入れていっています」。
来季、対戦する可能性のあるパ・リーグの主な打者1人1人の詳細なデータを知人のアナリストに出してもらった。投手のタイプ別に浮かび上がる得意なコースや球種、カウント別のデータなど、様々な特徴をノートにまとめ、徹底的に頭に叩き込んでいる。1人あたり約30分ずつかけてその作業を進め、ようやく1日が終わる。
「朝は早いですけど、それが全然苦にはならない。本気でトッププレーヤーを目指しているので。トレーニングをして、午後からはちょっと頭使って、と。でも、千賀さんとかに聞くと、1人(のデータ整理)に45分ぐらいかけているらしいので、まだまだ足りないなと思います」
「狙ったところに投げ切れたら、全部抑えられるんです。でも、投げミスをしても、打ち取れるボールがある。そこら辺を勉強していると、マウンドに上がったときに『甘く入ってもミスショットしてくれる』というプラスのメンタルで勝負できる。ここに投げなくちゃいけないとか、そういう固定観念を取っ払うことができる」
相手打者のデータを頭に叩き込んでおくことで、弱点を把握するのはもちろん、状況によって“痛打を浴びない投げミス”が分かっていることでポジティブなメンタルで打者に立ち向かえるという。パ・リーグ5球団の主力打者70人から80人ほどを丸裸にしていくつもりで、このオフ期間にそれを進めていくという。
データの重要性を再認識したのは秋季キャンプでの米トレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」による計測だった。「球団がああいうふうにデータを使ってやってくれたおかげで、自分がそういうのを見たり調べたりするのが好きなんだというのが確認できた。球団の取り組みが僕の興味を加速させてくれた。ただ、ホークスでオスナが余裕で一番データの勉強とかしていますよ」。貴重な機会を経験したことで、より一層の興味を抱くことになった。
だからこそ、自分の投球スタイルも再確認した。「僕は高めに投げ続けられるようにならないといけない。平良投手とかを見ていると、ほぼ高めに投げ込んでいるんで。自分の球質的にも、そっちの方が打ち取る確率が高いというデータが出ている」。俗に言われる“投手は低めに投げなきゃいけない”も固定観念。尾形がより抑えるためには“高め”を使わない手はないという。
「僕はグローバルな選手になりたい。トッププレーヤーになりたいので、その過程で経験を積んでいけるように数多く投げられるようにやっていきたい」。掲げる目標は壮大だ。異彩を放つそのキャラクター。来季でっかくその花を開花させてほしい。