球団幹部が認めたオスナ残留 MLBからオファーも…語っていた去就と鷹への“愛情”

ソフトバンクのロベルト・オスナ【写真:荒川祐史】
ソフトバンクのロベルト・オスナ【写真:荒川祐史】

1日にNPBが保留者名簿を公示、オスナを含めた外国人選手5人の名が記載

 去就について密かに語っていた。日本野球機構(NPB)から各球団の契約保留者名簿が公示され、ソフトバンクからは55人の名前が記載された。そのうち外国人選手は5人。カーター・スチュワート・ジュニア投手、リバン・モイネロ投手、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手、トレードで加入するアダム・ウォーカー外野手、そして守護神のロベルト・オスナ投手の5人だ。2024年、ホークスにとって最大の“補強”といえるオスナ残留。シーズン中にオスナ自身が語っていた去就についての考えをここで紹介する。

 保留者名簿は来季の契約を前提として記載されるもので、ここに記載された選手は基本的に来季もチームに留まることになる。外国人選手の場合、期限までに来季契約に合意できなければ、保留者名簿から外れて一旦は自由契約となる。チーム編成のトップを司る三笠杉彦取締役GMも、保留者名簿の記載を踏まえて「一般論として言っても、そうなんじゃないかと思います」とオスナの残留を認めた。

 具体的な交渉過程や契約内容に関しては「コメントは差し控えたいと思います」と語ることはなかったが、球団の誠意が伝わり、オスナ側との合意を形成できたことは確かだ。「基本的には『これでやりなさい』って、やるのが監督の仕事」と言う小久保裕紀新監督ですら「オスナがおらんかったら、話にならない」と残留を熱望していただけに、大きな戦力がチームに留まることになった。

 オスナはMLB時代にも最多セーブのタイトルを獲得するなど、圧倒的な実績を引っさげて日本にやってきた。2022年シーズン途中にロッテに加入すると、29試合に登板して10セーブ、防御率0.91の成績を残し、今季移籍してきたホークスでも49試合に登板して3勝2敗26セーブ、防御率0.92と、まさに期待通りの活躍でチームに貢献した。

 そんなオスナが、自身の去就について、初めて言及したのは8月だった。

 1回を無失点に抑えた8月13日の日本ハム戦(PayPayドーム)後にチームへの苦言とともに、自身の契約についても口にした。「自分の契約は単年なので。もう数か月したら“フリーエージェント”になる。そういう意味でも、しっかり投げられているところを見せないと」。ホークスに残留するにしても、他球団に移籍するにしても、野球選手として体が健康であることは示しておかないといけない。チームのためにも、自分自身のためにも、徹底的な準備を貫いた。

 結果的にホークス残留で決着することになったが、各球団との交渉、契約は代理人を通じて行われる。シーズン終盤の10月となっても、オスナ自身は「正直、まだ自分がどこに行くのかわからない状況。自分は努力をしましたけど、まだわからない」と語っていた。その中でも、NPBの他球団がオスナ獲得に動こうとしていることは本人の耳にも届いていたという。

ソフトバンクのロベルト・オスナ(左)と甲斐拓也【写真:荒川祐史】
ソフトバンクのロベルト・オスナ(左)と甲斐拓也【写真:荒川祐史】

 2023年の戦いが終わった翌日の10月17日、オスナは日本を離れ、母国へと帰国した。その際も「まだ段階としては決めるのは早い。ゆっくりと帰ってから考えようと思っている」と時間を使って考えるつもりでいた。その後はMLB球団からのオファーも届き、ホークス残留、NPB他球団への移籍、メジャー復帰と“三つ巴”の様相を呈していた。4年40億円超とも言われるホークスとの契約を選び、永井智浩編成育成本部長兼スカウト部長も「よかったです」とオスナの選択に胸をなで下ろしていた。

 8月に初めて去就に言及した時に話は遡る。「健康な状態であることをここのチーム(ホークス)はもちろん、他のチームにもアピールしないといけない」とオスナは語っていた。結果が全ての世界。オスナほど実績がある選手ですら、来季のサインをするまでは不安になるのか? そんな質問をぶつけると、オスナが何を大切にしようとしているのかが伝わってきた。

「実際、不安とかはないけど、チームをファミリーとして見ています。去年はロッテにいて、特に(佐々木)朗希がそうだったけど、本当にみんながいいファミリーだった。今年ホークスに来て、みんな素晴らしいチームメートだし、新しいチームになって、新しい家族ができることはすごく幸せなことなんだ。自分のキャリアはなんとかうまくやってこられているので、オファーは届くと思うけど、新しいチームで新しいファミリーができるのはすごく幸せなことだと思います」

 オスナはホークスの選手たちを「タレントだけで言ったら、12球団で間違いなく一番。信じられないくらいのタレントがある」と言い切り「ファミリー」とも表現していた。あくまでも“聞かれれば答える”というスタンスに立ち、若手たちに「実際、来年自分がどこにいるかは分からないけど、自分の学んできたこと、経験を彼らに伝えたい気持ちがある」と自分の生き方の全てを見せるつもりでいた。来季以降もきっと、超一流の背中を若鷹に示してくれる。

 シーズン終盤、去就が流動的だった頃。「“ホークスのオスナ”として取材できるのはこれが最後になるかもしれない」。そう思い、ホークスファンへのメッセージを求めた。オスナらしい実直な、優しい言葉だった。

「このチームでできて、素直にすごく嬉しく思っています。ファンの人たちもすごく温かく迎えてくれて、いつも応援してくれた。このチーム、このファンの中でプレーできたことはすごく嬉しかったし、福岡の町での生活もすごく楽しかった。ファンの人たちにすごく感謝しているよ」

 超一流のプロ意識の持ち主で、情にも厚い。ホークス2年目の来日予定はまだ未定だが、必ず本人の口から今回の去就について聞いてみたい。その時、オスナは何を語るだろうか。

(竹村岳 / Gaku Takemura)