最年長の“和田さん”らしい考えが、自主トレににじんでいた。過去最大の大所帯を背負う、真っ直ぐな責任だ。ソフトバンクは25日、九州各所で「ベースボールキッズ2023」を行った。和田毅投手はファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で、子どもたちとの交流を笑顔で楽しんだ。「天気も良かったですし、寒いなりにも陽が当たるとあたたかかったので、本当にいい野球教室になったのかなと思います」とはにかんだ。
10月16日に2023年の戦いを終えて、1か月以上が過ぎた。来季への準備はすでにスタートしている。「休養は終わっている。ここからもう1回体を作って、自主トレに仕上げていく。しっかりと怪我をせずに練習ができる体を作っていくこと。例年通りというか、特別なことはしていないです。キャッチボールをする人もいないので、毎年この時期は“壁当て”ですけど、やっています」と近況を語る。
来年1月も、長崎で合同自主トレを行う。板東湧梧投手、藤井皓哉投手らは2年連続での参加。さらに初参加となる松本晴投手や、大野稼頭央投手、他球団からの選手も含めて、今回が過去最大規模での自主トレになる見込みだ。「倉野さんをはじめ、投手コーチの方々と話をさせてもらっているところ。まずはしっかりと開幕、来年いい状態で2月1日を迎えることが大事」と照準を定めている。過去には「僕は自分から拒むことはしません」と話したこともある和田。どれだけ“大所帯”となろうとも、なぜ後輩の全てを受け入れるのか。その理由に迫った。
請け負う人数が多くなるほど、自分の時間が少なくなってしまうイメージがある。「昨年より、選手としては3人から5人くらいは増えると思います。スタッフも、ブルペンキャッチャーも1人じゃキツいので、人を増やすことができた。それを入れたら20人くらいはいくかなって思います」と20人を超える“大所帯”だ。しかし自身の練習については和田は「それは全然大丈夫だと思います」とキッパリ言い切る。
和田の狙いは、こうだ。自分の考えを後輩へ徹底的に叩き込む。自分の教えを吸い込んだ板東や藤井が、今度はまだ知識が浅い選手たちに教える。“縦の流れ”をしっかりと作ることで“チーム”としての一体感、教える選手の未来にも繋がる。「(自分の自主トレを)経験している選手が、そういうことを伝えてくれたら」と、イズムが受け継がれていくことを願っている。
「やることは同じですし、(若い選手との)話の中でも僕もそれはそれで自分にとっての勉強になる。自分で言うことで再確認にもなると思うので。去年より(人数が)倍になることもないので、僕の練習が疎かになることはないように」
小久保裕紀新監督は、指揮官としての信条に「コーチを“1個飛ばし”にしないこと」を挙げていた。監督→コーチ→選手と、自分の考えが伝わるように、大切にしているのは縦の繋がりだ。形は違えど、和田も選手同士の繋がり、交流を大切にしているのは間違いない。
すでに板東や阪神の大竹耕太郎投手らと自主トレについてのミーティングを始めているそう。後輩らの意見を吸い上げて、より濃密な時間にできるように考えを擦り合わせている。当然、絶対的な取り組みの“芯”は大切にしつつ、42歳の和田から寄り添う。実績だけで言えばメンバーの中でも圧倒的だが、後輩から刺激をもらおうとする姿勢を失わないから、和田の心身はいつまでも若々しい。
「僕もすごく楽しみにしていますし、今回は早川(楽天)がウインターリーグに行きますし、その経験や『どうだった?』って話は僕も聞きます。(松本)晴とか、ドライブラインでシアトルにも行く。現地の様子、話も聞きたいですし、本当にたくさんの若い選手が来てくれるのはありがたいですから。逆に若い子たちから学べること、聞けることもたくさんあるので。それはそれで、僕自身はありがたいなって思います」
和田自身の来季の目標には「イニング増」を掲げた。今季の最長は8月31日のオリックス戦(PayPayドーム)の7回。最多の球数は103球が2試合あった。「イニングを増やしたいのが一番ですね。球数も、70球とか80球とか、100球未満で終わることがほとんどだったので、100球未満で6回や7回まで投げられたら理想ですけど。そうなれば8回、9回も見えてくる」。年齢を重ねようが、先発投手としての矜持を抱き続けるから、いつまでも第一線に立っていられる。
「今年以上にしっかりと『投げてもらえる』と、思ってもらえるような状態で2月1日に立てるようにしたいです」。現役選手でいられる間に、残せる全てを後輩に残す。